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vol.8 高校2年生、恋に乗馬に|青春駆ける ~馬術に情熱の全てを捧げた10年間の成長の足跡~

夏休み その2

8/3(日):Aちゃんとの交際がI先生にバレた。160cmの大障害を飛越

人生初のガールフレンド。嬉しいったりゃありゃしない。喜ばない方が逆に失礼。コレから毎日笑顔を咲かせて幸せいっぱいに暮らせそうだ。寝不足ながらも朝4時半に起きた。”今日も練習頑張るぞ!”と顔を洗って強引に目を醒まさせた。7時半ごろMRCへ。厩舎掃除では嬉しくてニヤニヤ。スタッフさんから「今日、ちょっと気持ち悪いよ」と苦笑されて距離を置かれる。「そうですかねぇ、いつもこんな感じですよ (ニヤニヤ)」とさらにニヤケてまた笑われる。

スプラッシュに乗ってI先生のレッスンを受ける時だけは真剣に集中。そりゃそうだ、ちょっとでも笑おうものなら「何がおかしいんや」と脚立や横木を投げられるから。しかし、馬を降りた瞬間から気が抜けてまたニヤニヤしちゃう。”I先生にニヤケ顔を見られまい”と服を噛んで必死に笑みを押し殺した。朝10時ごろ、MRCへAちゃんが来ました。人通りの少ない馬のエサ置き場まで二人で行って改めて告白。さすがに二人とも照れました。メールで既に互いの想いを確かめ合っているとはいってもリアルではまた別。遠くからI先生の私を探して呼ぶ声がする。「ヤバいヤバい」と新カップルはAちゃんだけ駆け足で逃げて散会。

I先生に何か用事を言いつけられて「分かりました」と応じます。I先生、”うむ”と引き返すも3歩進んでUターン。

I先生
お前、何か今日おかしくね?
かめ
いや、いっつもおかしいですよ
I先生
まぁ、そうやけど笑

今日は何か特別おかしい

かめ
そうですかねぇ…
I先生
なんかエェことでもあったん?
かめ
はい!まぁ…(*≧∀≦*)
I先生
何があったんや。言ってみろや
かめ
ちょっと言えないっすね…
I先生
言えや

コチョコチョ攻撃

かめ
ギャハハハ!!くすぐったい、くすぐったい!あ~、死ぬー!!
I先生
はよ言えや。死ぬまでくすぐるぞ
かめ
ちょっと言えないっすね…

あ~やめてやめて!くすぐったい~!!ギャハハハハハハハ…!!!

I先生
はよ言え。言わんか笑!
かめ
ヒャーッハッハッハッハッ!!!ギャハハハハ!!!!!
I先生
お前…もしかして彼女できた?
かめ
”ピクッ”(えっ?何で分かった…?)
I先生
誰と付き合っとるん?MRCの人か?
かめ
I先生の知らない人ですよ~ (怖い怖い怖い怖い。何でバレた?!どうして分かった?)
I先生
あっ、分かった。Aちゃんやろ!
かめ
”ピクッ”(バレた…)
I先生
Aちゃんなんやな?
かめ
I先生
Aちゃんなんやな?って聞いとるんよ
かめ
…はい
I先生
はぁぁぁぁ~、えぇのお!羨ましかー!
かめ
恐縮です (大人って怖いわぁ…)

あっけなくI先生に交際がバレてしまいました。

いつまでも隠し通そうと思っていたわけではありません。付き合い始めてから1か月後ぐらいにI先生へ言いに行こうと考えていました。それがまさか、交際開始12時間後にバレてしまうなど予想外。青天の霹靂とはこのことだ。Aちゃんのことでのぼせ切った頭から熱がすっかり冷めました。I先生が思っていたよりも恋愛に寛容で良かったです。いつもの如く、痛烈なデコピンを何発もお見舞いされるのを覚悟していたから。

 

12時過ぎ、炎天下のもとI先生による障害レッスンが行われました。乗る馬はMRCで私が特別に乗せて貰っている子 (愛称:オーロラ)。今回やるのはコンビネーション。単発で障害を飛越するのではなく、低い障害や高い障害を何個も組み合わせたものを飛ぶ練習です。

コンビネーション障害の模式図

速歩でコンビネーションへ入って最初のA障害 (クロス)を飛越します。すると馬は駆歩になり、駆歩で次のB障害 (垂直)を飛越。同じリズムでまた駆歩。コンビネーションで一番高いC障害 (垂直)を飛越するのです。オーロラくんはコンビネーションが得意。A、B、Cと軽やかに楽々クリアしていきます。最初の設定値はC障害が80cm。オーロラくん、そのはるか30cm上を通過しました。コレを見たI先生、「調子えぇのお♪」とCを100cmに引き上げる。オーロラは「そんなの余裕です」と言わんばかりに100cmのさらに20cm上をバコーンと飛越。着地後、「オラオラオラ!」と言って後ろっぱねして大暴れ。I先生、機嫌を良くしてさらに20cm上げました。

120cmまでなら普通です。これまでにも何度かオーロラくんと飛越練習をしたことがあります。しかし今日はおかしかった。さも”当然”と言わんばかりに130cmまで高さが上がったのだから。I先生、「次はコレや~」と130の障害を指しておっしゃいます。 (まぁ、130ぐらいなら行けるかな)とオーロラと挑み一発で成功。今日のレッスンはまだ終わらない。「ハイこれ飛べ―い」と10cm上げて140を飛越するよう指示を受けました。140cmの障害なんてスプラッシュとさえ飛んだことがない。もはや壁。とても飛べそうには思えなかったがオーロラは軽々と飛び越えた。I先生、「すごいやないか!」と珍しく褒めてくれました。

(怖かった!やっと終わりか、、、) と馬場の片隅でオーロラと安堵。しかし「ついでに行っとけー」と10cm上がって150に。ココではさすがに弱音が漏れた。「先生、さすがに150は厳しいんじゃないですか?」と。I先生、さっきまでのご機嫌がウソみたいな激おこぷんぷん丸に変身。「飛べるわ!黙って飛べや!オレもオーロラでこんな高いの飛んだことないけどと叱られました。「ごめんなさい」と謝ります。覚悟を固め、オーロラへ「行くぞ!」と声をかけてコンビネーションへ。A障害、B障害と無難に通過し、150cmのC障害へ。オーロラは一瞬躊躇するも、期待に応えてC障害をバッコーン!とバーの上を飛越。I先生、「よーし!」と人馬ともども褒めてくれます。

(やっと終わった…)とオーロラの首を”よしよし”とたっぷり撫でてあげた。「ついでに行っとけ~!」と言われた時は耳がおかしくなったかと思った。C障害がまた一つ上がって160cmになったのです。「無理です」と言ってもまた怒られる。黙って行くしかありません。オーロラも160の大障害を二度見。「マジ、おれコレ飛ぶの?」と私を振り返って見てきたぐらい。150は飛越できても160の完飛は至難。4回連続で160を前脚で落下してしまいました。I先生、「次、落としたら坊主な」とプレッシャーをかけてきます。ちょっと理不尽じゃないですか、先生笑。彼女ができたばかりなのに坊主だなんてひどい話。さすがに坊主は嫌だった。オーロラへ「頼む、後でニンジンいっぱい上げるから落とさないでくれ」と半泣きで必死に何度も嘆願。オーロラ、さすが男です。”分かった”と応じてくれました。5度目のチャレンジで160を完飛。坊主にならず、翌週末の花火大会デートを毛”アリ”で臨む権利を得ました。

実はI先生、私らが160を飛越した後、もう一つ高さを上げて170にしようとしていました (←ドS極まりありません)。しかし、バーの掛け金が170の高さに掛からなかったらしく、「しゃーないのぉ。今日はこれぐらいにしといたるわ」と地獄から解放して下さりました。レッスン後、「お前、160ぐらいやって当たり前や。こんなもんで弱音吐いてて彼女守れるんか?」と謎理論にてこっぴどくお叱り。えっ?、160飛ばさせられたの、彼女出来たからなんですか笑?。てっきり『160を飛べたら120なんて低く見えるやろ』といった狙いがあるものと思っていました。「はい、すみません。気を付けます」と首をかしげつつも謝罪。これから彼女との交際期間中、いったいどんな恐ろしい練習が待っているやら分かりません。

 

8月末:蒜山で国体前最後の競技へ

AちゃんやI先生とワチャワチャしつつ、最後の国体へ向け練習を継続。8月末、夏休み最後の土日に蒜山で競技に出ました。この大会は国体前最後のレース。ラストの国体で有終の美を飾るためにもスパッと気持ちの良い走行がしたい所。

初日にオーロラで100cm/2日目にオーロラで110cm、スプラッシュで120cmに出場。オーロラとの走行については過去最高の出来でした。今までオーロラで競技に出ても80cmコースでさえ失権していた。障害へまっすぐ誘導できなかったり、スピード調整に苦しんだりと、オーロラで競技をまともに完走できたことなどほとんどなかったのです。それが今回は初日・2日目ともに完走できた!2日目に至っては110cmを無過失・減点ゼロで回って4位入賞。表彰式で貰った白い馬リボンが本当に嬉しかったです。表彰式後、「オーロラ、やったね👍」と白リボンを見せてあげた。

2日目 110cm減点ゼロ・4位入賞

ビデオには映っていませんが、オーロラと減点ゼロで帰って来られたのが嬉しすぎて馬場で笑顔でガッツポーズ✊。下馬後、I先生から「カッコつけんなや^^」としこたま頭をどつかれました笑 (←ガッツポーズぐらいさせて下さいよ…)

 

スプラッシュとの走行はイマイチでした。120cmの経路走行中、ある障害の飛越数歩手前で視界がかすんで見えにくくなり、どうしても踏切位置を合わせられず馬を拒止させてしまいました。タイム減点も合わさり減点6でのフィニッシュです。障害自体はただの一つも落としていなかっただけに悔やまれる結果。

2日目 120cm走行映像

実はコレ、視界不良は受験勉強が原因なんです。夏休みに入り、勉強の密度を一段と高め、ガンガン追い込みをかけるに伴い視界が曇っていきました。夏休み中はMRCへ行く前 (4:30~6:00) と帰宅後 (19:30~22:00)しか受験勉強ができません。本当はもう少し時間をかけて勉強しなくちゃいけないのだけれども、勉強に割ける時間がコレだけしかないから、時間当たりの集中力を倍以上にして効率的に頑張るしかありません。集中すると目に力が入る。首を曲げ、手元だけを凝視するから余計にどんどん目が悪くなる。炎天下のMRCでは太陽光が視力を奪う。帰宅後、目を瞑ってゆっくり休めば視力は下がらないが、休む間もなく勉強するから当然の成り行きで視力が低下。夏休み中、少しずつ落ち行く視力のせいで練習にも支障をきたすように。目薬を差しなんとか誤魔化しここまで症状を乗り切ってきました。競技で成績を残すため、勉強を一時ストップすることをも一瞬頭をよぎりました。しかしそれだけは自分が許さぬ。勉強も乗馬も両方真剣にやってこそホンモノのアスリートだと思ったから。

調子を上げて国体へ臨むつもりが、逆に不安材料を一つ増やして行かねばならなくなりました。国体本番、大事な障害の前で曇ったら果たしてどうしたら良いか?目を瞑ってでも踏切り位置を合わせられる練習をしておくべきかな。いや、心配し過ぎるのがいけないのだろう。普段通りに泰然と構えて最後の国体を楽しむだけだ。これまで身の毛もよだつ恐ろしい練習をどれだけやってきたと思っているんだ。

  • 鐙無しで120cmを飛ばされたり[青春駆ける・小5編]
  • 幅2m近いオクサー障害をポニーで飛越させられたり (高1。ポニーではなく自分だけが障害の2m向こう側へ投げ飛ばされた)
  • オーロラと160cmの障害を半泣きになりながら飛び越えてきたり

国体に出場する少年選手の中では屈指の泥臭さだという自負がある。目が見えない?だからどうした。大丈夫。どれだけ体がおかしくなろうとも乗り越えられるだけの練習はしてきた

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