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vol.8 高校2年生、恋に乗馬に|青春駆ける ~馬術に情熱の全てを捧げた10年間の成長の足跡~

夏休み その1

心を鬼にし猛練習

昨年の失敗の経験を踏まえて今年は猛練習を行うことに。最後の国体、必ず良い成績で終えたかったから、朝から晩までMRCで馬漬けの毎日を送りました。自分は天才なんかじゃない。努力しなけりゃ結果は出ない。人並みの努力じゃ足を掬われる。人の二倍、三倍、いや四倍やって初めて人並みの結果を得られるんだ。目標はあくまで国体優勝。特にダービーでの戴冠を果たしたかった。バンケットや坂道障害など、MRCにいっぱい障害を作ってもらった。その人たちの恩に報いるにはダービーで勝つのが一番だと思った。

平日・土日関係なく、一日8頭前後の練習を実施。早朝に厩舎掃除を手伝うことでその”お礼”として馬に乗せてもらいました。馬に乗り過ぎお尻の皮膚が薄くなったり皮が剥がれたり。「いってぇなぁ…」と呻きながらもダービー優勝のため練習を遂行。夏のMRCは太陽光が燦々と降り注ぐ。非常に暑くて日焼けで痛い。汗が出ても10分後には皮膚の上に白い粉だけが残っているほどの暑さ。まだ湿度がないだけマシだったけども、それでも十分キツかった。納涼のため蛇口から水を出しては頭を洗う。馬の毛だらけのタオルで顔を拭いてはまた練習へと向かうサイクル。

夏休みになると憧れのAちゃんが乗馬クラブへ練習に来ます。Aちゃん、可愛い上に愛想も良くて、すれ違う時はいつも必ず「こんにちはっ^^!」と挨拶してくれる。もう可愛いったりゃありゃしません。ほぼ毎週顔を合わせていても目が馴染まないほどとびきり素敵な女の子でした。去年はAちゃんに視線を奪われ練習に集中できませんでした。今年も同じことをやったら私は最早、サルも同然。Aちゃんが近くにいても平常心を維持して練習を進める”Aちゃんにチヤホヤされたいな~”と思っても心の外には出さずに練習。女子にペラペラと話しかけるのは私の性には合いません。寡黙に練習。泥臭く練習。多くを語らず結果と背中で実力を証明する方がカッコいい。とはいえAちゃん、可愛いです。こんなに素朴で素敵な女子が懸命に話しかけてくれるのは拒めない。Aちゃんへの思いをギュッと押し殺しつつ、”Aちゃんにまた「カッコいい!」と言って貰うため頑張るしかない!”と固く決意。恋心を駆動力に高2の夏、思い切り練習に打ち込みました。

 

8/1 (金):MRCのパーティーに参加

金曜日、MRC主催のパーティーに参加。会場は広島市内の広島サンプラザ。新井口駅から歩いておよそ11分の好立地。


新井口駅 – Bing 地図

当日はいつもと変わらず朝7時半から厩舎掃除。8時半ごろ掃除を終え、9時からI先生に「コイツとコイツとコイツと…とコイツに乗っとけ」と指示され8頭のフルコース。パーティーの開始は午後6時。MRCからパーティー会場まで行くのに時間がかかりますから、一刻も早く8頭乗り切り服を着替えなきゃいけません。当日は朝からAちゃんもいました。 (今日も爽やかだなぁ…)と一瞬見惚れ、すぐ正気に返って馬装を開始。ボーっとしている場合じゃない。8頭乗らなきゃいけないのだから。頑張って午前中に5頭乗り、昼食を2分で急いでかきこみ午後に3頭乗り切りました。高2の私はMRCでほぼスタッフ扱い。パーティー会場へも親の送迎ではなく、スタッフらの乗る社用車にて行くことになっていましたから。

出車予定時刻の5分前に馬の手入れをすべて完了。鞍や頭絡、ヘルメットなど、道具を手入れし倉庫へ急いで片付ける。クラブハウスに戻って服を着替えて大急ぎで社用車へと向かう。「ギリギリになってすみません!」と謝罪と共に扉を開けた。するとそこにいたんです。誰かって?あのAちゃんですよ。「隣どうぞ♪」と席を空けてくれた。「ありがとう!」とAちゃんの隣に着席。Aちゃんと二人で車の三列目にて他愛もない話をしていました。そうしたら2列目にいたI先生、「お前ら、そこでイチャイチャすんなよ」と私の脇腹をくすぐります (←イチャイチャしてない)。I先生のくすぐり方って、くすぐったいし痛いんですよ。「くすぐったい!痛い!死ぬ!!ギャハハハ…!!!」と痛いのだかくすぐったいのだか分からないような感想が漏れる。I先生、面白がって「どっちやねん。痛いんか、くすぐったいんか」とさらに脇腹をくすぐってきます。Aちゃんの左隣で「あぁ痛い!死ぬ!!もうしません!ごめんなさい、ギャハハハ…!!!」と断末魔の如き叫び声をあげて口から泡を吹いてしまいました。Aちゃん、隣で大爆笑。「ごうくん、面白~い笑!」とお腹を抱えて笑っていました。どんな形でもAちゃんのことを喜ばせられて嬉しかったです。I先生、その節は沢山くすぐって下さりどうもありがとうございました。

パーティー会場には16時半ごろ到着。Aちゃんと二人、スタッフさんらの会場設営をお手伝い。18時から予定通りパーティーが開始。Aちゃんともども、これまで花見以外でMRCのパーティーへ出たことがなかったから、「いったい何があるんだろうね」「楽しみですね」とヒソヒソ話をしていました。パーティーではスタッフさんらの体を張った一発芸で爆笑。”この人、こんなことやるキャラだったっけ?”と首を傾げたくなるような振り切れぶり。悪ノリで私まで壇上で何かやらされました。何をやったんだっけなぁ……  めちゃめちゃ恥ずかしい思いをしたのだけはしっかり記憶に残っています。その後、普段一緒に競技会へ出ている方々らとご飯を食べながらの歓談。午後8時ごろ、パーティーが無事にお開きとなりました。

 

パーティー後

MRCの会員さんらがおおよそ帰り切った頃、私とAちゃんはスタッフさんらと会場の後片付けをしてました。片付けを終え、「二人とも、もう帰っていいよ」と言われて帰路に着きました。会場を出、”さぁて、帰るか”と歩を進めようと横を見ると、Aちゃん、何だか心細そうな顔をしています。置いて帰るとマズそうなので事情を聴いてみることに。

かめ
どしたん?
Aちゃん
一人で帰るの、ちょっと怖くて…
かめ
Aちゃん、どこ方向に帰るん?
Aちゃん
○○駅の方です。広電 (広島電鉄)に乗って帰ります。ごうくんはJRに乗るんですよね…?
かめ
ホントはね。じゃけど、Aちゃん置いて帰るの不安じゃけ僕も広電に乗る。一緒に帰ろ?
Aちゃん
えっ、(帰り道が遠回りになっても)いいんですか?
かめ
えぇよ。その電車に乗っても帰れるけん、何も問題ないよ
Aちゃん
じゃあ…… 一緒に帰って下さいっ!!
かめ
分かった

(帰宅デートキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!)

こうしてパーティーの終わりにAちゃんと一緒の電車で帰ることに。

広電・商工センター駅まで歩き、パスピー (SUICAの広島Ver.) をタッチし改札を通過。ホームで10分ほど電車を待ち、右に立つAちゃんの頭上からチンチン電車 (←下ネタではないのだけれども…) 広電がやってくるのを確認。「乗ろうか」「はい^ ^」  言葉を交わして3両編成の電車の末尾へ。一つだけ空いた席を示して「座って」とAちゃんに譲りました。Aちゃん、謙虚だからそう簡単には座りません。「ごうくんが座って下さい」と私に席を譲りました。女子の前で女子を差し置き席へ座れば男が廃る。「い~や、Aちゃんが座って」と再び譲って無理やりAちゃんを座らせました。

Aちゃんの前で吊革につかまりようやく2人だけのトークが開始。地元のこと、学校のこと、好きなモノなどを話題にいっぱい言葉を交わせました。私が「今年の国体は勝ちたいんだよね~」と言ったら「応援してます!ごうくんなら勝てる✊」とニッコリ笑顔で応援してくれた。可愛い。あざとい。これは勝つしかない笑。「ありがとう。めっちゃ頑張れそう^^」とAちゃんの応援に心から感謝した次第。

少し大きめの駅で乗客が降りてAちゃんの左隣が空きました。「ごうくん、ココどうぞ」と、空いたスペースを左手で指して座るよう促してくれました。でもその座席、結構狭い。座ったらAちゃんとピッタリくっつきそう。付き合ってもいない男とピッタリくっつくのなんて嫌でしょう。「いいよ。僕、立っておくから」と一度はご遠慮申し上げた。しかしAちゃん、譲りません。「座って下さい」とまた言います。「座ったらピッタリくっついちゃうよ?」「いいから座って?」「いいの?」「いいんです」 上目遣いの女の子には逆らえないから「分かりました」と腰を下ろすことに。予想通り、狭いです。Aちゃんと体がピッタリくっつく。 腿からAちゃんの体温を感じる。温かくてついついドキドキちゃう。(Aちゃん、嫌がってないかな…)と座席の前のガラスに映った透明なAちゃんのお顔を拝見。Aちゃん、別に嫌がってなさそう。体の接触を極度に意識していたのはもしかして自分だけだったのか。

一段と近い距離にてAちゃんとの会話が再び進行。話題はいつの間にか恋バナに移り、互いが過去に気になっていた人のトークで盛り上がりました。私の場合、昨年の東京国体の表彰台で隣に立った山口県の同い年の可愛い女子選手の話をしました。「あの子はヤバい。見たら鼻血出して倒れちゃう」と謎の語彙でもって魅力を表現 (伝わったのかな?)。「もっと好きな人が隣にいます」…とはどうしても言えませんでした。度胸があれば、サラッと言える爽やかさがあれば伝えられたかもしれないけれども。恋バナがどんどん弾むにつれてAちゃんへの想いが単調増加。 (あぁ。もう、この子のこと大好きなんやわ…)と自分で呆れ返ってしまうほど。”よし、告白しよう!”と心に決めた。Aちゃんがこの電車を降りる前に自分の気持ちを伝えるんだ、と。返事は別に期待していない。自分の胸を張り裂かんばかりに膨れ上がった恋心から放たれたい。でも、結局は言えずじまい。Aちゃんの家の最寄り駅に着いたことを知らせるブザーが車内へ響き、「じゃあまた明日。週末に会いましょ(*≧∀≦*)」とニッコリ笑ってAちゃんが降りていきました。手を振りながらAちゃんを見送り、消えゆく後姿を目で追いかける。

「言えなかったな…」
高嶺の花に手が届きそうで届かなかった無念をギュッと噛みしめて帰宅。

 

8/2(土)夜:待望の瞬間

言えなかった…

この事実はあまりにも重い。気持ちを打ち明けるチャンスが幾らでもあったにも関わらず、恥ずかしさや”断られたらどうしよう”との恐怖心が勝って口が動かず。千載一遇の機会を逸した。Aちゃんとの恋はもう叶わない。気持ちが非常にモヤモヤします。情けない自分が大っ嫌いだ。こうなったらもう、ウマの練習を徹底的に頑張るしかない国体優勝し、結果でもってAちゃんを振り向かせるのみ

パーティーの翌日、土曜日はいつにも増して真剣に練習。恒例の8頭コースをこなすために休んでなんかいられなかった。10時ごろ、1頭目の運動を終えたあたりにMRCへAちゃんが来た。「昨日は一緒に帰ってくれてありがとうございました^ ^」と丁寧にお礼を言われました。お礼は超嬉しかったんだけれども、Aちゃんを見ると昨日の情けない自分まで思い出されてすんごく辛い。あいさつ程度の会話に留めて練習や馬の餌やりへと逃げた。

 

乗馬クラブから家に帰り、「あぁ、疲れたわ~」とシャワーで汗を流す。体を拭いて浴室から出、スーパーで買ったお好み焼きを口いっぱいに頬張って食べる。疲労困憊時のお好み焼きは体に染みてたまらない。麺やお肉、千切りキャベツが三位一体となり体を癒す。自室に戻り、英語や数学など受験勉強を2時間ほど実施。午後9時半、ベッドに横たわり、「明日も頑張るぞ」と言って消灯。

しかしなかなか寝付けない。Aちゃんのことが頭にちらつく。気になって気になって仕方がない。30分ほど粘って睡眠を試みるも”無駄な努力だ”と諦めて起床。さっきからどうもケータイが気になる。「何故だろう」と開いてみるとAちゃんからのメールが届いていました。 (なんだなんだ?)とメールを読めば、「ごうくん、好きな人いますか?」といったもの。おいおいおいおい、急にどうした。こりゃますます寝られなくなってきたな!  『います』と3文字打って返信。1分後、「(誰が好きなのか) 気になります!」との返信が。はてさて、一体どうして私の好きな人が気になるんだ?悲しきかな、男子高生。真意を図り損ねたためAちゃんへ電話を掛けてみることに。

かめ
もしもし、Aちゃーん
Aちゃん
ビックリしたぁ…!

急にどうしたんですか?

かめ
いやぁ、ちょっと声が聴きたくなってさ…
Aちゃん
またすぐ明日、会えるじゃないですか!
かめ
まぁ、そうなんじゃけどさ

ところで、さっきのメールってどういう意味?

Aちゃん
えっ、そのままの意味です
かめ
そのままって、どのまま?
Aちゃん
もう……分かるじゃないですか!
かめ
えっ、ごめん。分からんかった
Aちゃん
もぉ~、、、ごうくんのバカっ!イジワルっ!
かめ
(バカって言われたー(泣))
Aちゃん
切りますね
かめ
えっ、ちょちょちょ、ちょっと待っ
Aちゃん
切りますから

ブチッ

かめ
バカって言われちゃったよ…

ガックリきました。”電話なんかしなけりゃよかった”と深く深く反省しました。好きな子相手に小細工なんてしたら絶対にいけないんですよ。正々堂々気持ちをぶつけて相手の返事を待つしかない。もしかしたら今の電話で嫌われてしまったかもしれません。でも好きなものは好き。「好きだ」と伝えなきゃ相手にこの想いは届かない。

「Aちゃんが好きです」と意を決して打つ。送信ボタンを押そうとするも、緊張で手が固まっちゃってボタンを押すための握力がない。固まった右手を左手で抱え、「えいやっ!」と両親指でボタンをクリック。返事を見るのがあまりに怖くて勉強机にケータイを置く。蒸し暑い家のベランダで右往左往の100連発。 (あぁ、Aちゃんはどっち?好き?それとも嫌い?) 5分ほど外でウズウズしたあと覚悟を固めて自室へ戻る。ケータイにはAちゃんの返信が。「私も (貴方のことが好き) です」との返事を頂きました。どーしてもAちゃんの声が聞きたくてたまらなくなった。「電話してもいい?」「いいですよ」

かめ
さっきはごめんね
Aちゃん
私こそ言い過ぎてごめんなさい。怒ってませんか?
かめ
ぜーんぜん^ ^!

それより、「好き」って言ってくれてありがとう。片想いやとずっと思ってたけん、両想いやと分かってぶち嬉しかったんよ

Aちゃん
私も両想いだと分かって良かったです…
かめ
じゃあ、また明日ね。改めて明日、告白させて
Aちゃん
直接言われたら恥ずかしいです…
かめ
いぃじゃん、言わせて
Aちゃん
うぅぅ…… 分かりました
かめ
じゃあね、お休み。今日はありがとう
Aちゃん
こちらこそありがとうございました。おやすみなさい!

Aちゃん、改め彼女と仲直りして土曜日の夜を締めくくりました。

電話の後、「明日はどんな顔してAちゃんに会えばいいんだろう…」と再び緊張が高まってきました。もちろん夜はほとんど寝られず、寝不足で翌朝を迎えたことは最早言うまでもありません

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