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【書評】思考力とは?リーダーシップとは?伊賀泰代さんの「採用基準」を読んで絶望と危機感を覚えました

思考力とは

『採用基準』はリーダーシップの重要性を説く本であり、本書のおかげで私の中のリーダーシップに対する捉え方が随分と変化したように思う。

そして、扱いはほんの僅かだったものの、私がハッとさせられた内容があったのでそれも紹介したい。

 

私がこの本を読んで息を吞んだのは、”思考力”という漠然としたものを言語化し、かつ3つの要素に分解して説明していた所である。

本書において思考力とは、以下の3要素で定義される。

  1. 思考スキル:物事をどう考えるか?ロジックツリーやMECE (Mutually, Exclusive, Collectively and Exhaustive) など、分析のフレームワークとなるテクニック。
  2. 思考意欲:どれだけ(考えたいっ!)と思えるか?思考意欲のある人は、暇さえあればずっと何かを考えている。
  3. 思考体力:考えるのに必要なエネルギー。考え続けるのにも体力が必要。

私自身、何となく①の事だけを思考力だと勘違いしていたが、まさか②や③も思考力の範疇だとは全く考えていなかった。

実際、多くの就活生も①を思考力だと思い違いをしているらしく、①の能力を伸ばすためにビジネス本を買い込んだりケース面接対策をしたりしていたようである。

著者が所属していたコンサルの面接では、思考スキルよりも思考意欲や思考体力を備えているかを重視していたらしい。

なぜなら、思考のフレームワークに関しては教えたらすぐ身に着けられるが、思考意欲や思考体力を養うには一朝一夕ではいかないからだ。

コンサルファームの面接では、その面接で繰り出した質問にうまく答えられるかよりも

  • この人は考えるのが好きか?
  • 数時間、ぶっ通しで考え続ける体力はあるか?

こうした要素を見ているようだ。

即戦力を求めるコンサルには人材をゼロから育てる時間はなく、すぐに戦場へと送り出せる人材を採用したいと思っているし、いくら専門用語の多用で武装しようとも、うわべだけ立派で中身は空っぽの就活生のメッキなどすぐ剥がされてしまうという訳である。

日系企業の面接で行われるフェルミ推定も、おそらく上と同じ理由で行われているのであろう。もっとも、ケース面接よりフェルミ推定の方がテクニック要素が高いように思うが。

 

私には思考力があるのか、私は考えるのが好きなのか

私には思考スキルが備わっているという自負がある。

  • 日本の中学・大学受験を突破するにあたり、問題のパターンを分析してそれに適した解法を頭から引き出して使う訓練を積んできたし
  • 高校~大学時代に50冊ほどビジネス本を買って読んだおかげで、ロジックツリーやPDCAサイクルの存在,およびその使用法を熟知しているし

決して地頭が良いとは思えないが、少なくとも思考スキルに関しては備わっていると思う。

しかし、思考意欲と思考体力に関しては、企業が欲しがるレベルに達していない。

確かに暇さえあれば何かを考えているが同じ所を堂々巡りしているだけだし、数十分考え続けたら「あ~疲れた!」と言って考える事から逃げてしまっている。

 

私は考える事が好きである。

好きなのだが、考える意欲と考え続ける体力を養おうなどと今まで”考えた”経験がなかったのである。

考えるのが好きだし、考え続けたい対象がある今、就活目的というよりも何かを考え続けた先に見える世界を味わうために思考力を伸ばしていきたいと思っている。

私の友達のパスカルも「人間は考える葦である」ってこの前ドヤ顔で呟いていたし、自分の長所になるかもしれない思考力を伸ばさずにはいられなくなったのである。

リーダーシップと思考力は全ての業界に必須である。

思考力を伸ばすだけで就活対策になるし、小手先のテクニックを仕入れなくて済むようになる。

 

最近のコンサル人気の秘密が何となく分かった気がする

最近の就職人気ランキングの上位には、外資のコンサルファームがランクインしている。

学生がコンサルを選ぶのも、”日系企業より給料が良く優秀な人と切磋琢磨できるから”というのが一因だと考えられる。

それに加え、コンサルに入れば自然とリーダーシップが磨かれ、これからの不安定な世界を生き抜く力を養えるから、就活生は”本能的に”コンサルを選ぶのではないだろうか?

いくら英語が堪能で高い専門性を持っていようとリーダーシップ無しでは何もできず、世界のどこでも食っていける人材になるためコンサルで修行する道を選ぶ学生が増えているのではないだろうか。

いつクビになるかわからないコンサルに入るよりも、横並びで昇進・昇給する日系企業へ入った方がどれだけ楽だか分からない。

それでもコンサル人気が高まっているのは、自分の人生に当事者意識を持ち、”お前が消えて喜ぶ者にお前のオールを任せ”たくない人が増加している何よりの証拠である。

私自身、この本を読み(コンサルに行くのもアリだなぁ)と考えるようになった。

博士卒業後、専門性を活かして電池製造業界で活躍したいと目論んでいたものの、日系メーカーではその企業だけでしか通用しない能力を伸ばさざるを得なくなる可能性があり、(将来のキャリアデザインを再考する必要がある)と思わざるを得ないほど、この本の内容は私にとって衝撃的なものであった。

の性格的に、年功序列精神が文化として根付いている日系企業に入ったらロクなことにはならないだろう。

外資系メーカーの日本支社に勤められたら一番幸せになれるだろうな。

 

最後に

伊賀泰代さんの『採用基準』を読んで考えたことは以上である。

年始早々、人生観を揺さぶる本と出会え、大変嬉しく思っている。

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