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vol.9 高校3年生、夢に破れる|青春駆ける ~馬術に情熱の全てを捧げた10年間の成長の足跡~

国体

10月:和歌山国体

国体・馬術
馬術 | 2015紀の国わかやま国体 (wakayama.lg.jp)

三木への移動・開幕まで

10/1開幕の和歌山国体に向け9/28に広島を出発。”和歌山”国体とは名ばかりに、兵庫は三木での国体開催。午前中に広島を出て数時間後には三木へ到着。馬運車の中でワイワイ喋っていたらすぐ三木に着きました。Sさんらに「運転するI先生の隣では『絶対に寝てはいけない』んです」と言ったら爆笑。「起きてたってお前が運転するわけやないんやから別に寝ててえぇやないか笑」と。ですよね?やっぱそうですよね?しっかり寝た分、会場へ到着した後ちゃんと働けばいいだけでしょう。

馬運車からYくんらを降ろして厩舎へ連れて行きました。Yくん、三木の大会には幾度もの出場経験がありますので、「あ~、またココね」と言わんばかりに厩舎で落ち着いていらっしゃいます。私自身、これまで三木でたくさん競技に出てきました。おかげで最後の国体は競技前に特段緊張せずに済んだのです。厩舎では広島県のチームメイトらとバカな話で大盛り上がり。受験で切羽詰まって凝り固まった心が楽に。頑張りすぎるのは良くないですね。たまにはリラックスするのも大切。

元カノ・Aちゃんの前でSさん、国体恒例の「かめちゃん、可愛い子探してこい!」をおっしゃる。なんでわざわざAちゃんの前でそんなこと言っちゃうんですか笑。Aちゃんの顔をまともに見られず最高に気まずかったです。そんな私を見てSさん、大笑い。「Aちゃんの方がえぇんか?」本人の前で「ハイ」だなんて言えるわけがないから赤面。Sさん、さらに意地悪を重ねる。

Sさん
そういえばかめちゃん去年、Aちゃんと付き合っとるのに「山口のNちゃんが好きです」って言うとらんかったか?
かめ
そんなことAちゃんの前で言わんでも…

いやいや、綺麗な人を見つけました」って言うたんですよ!何を言うとるんですか、Sさん!

Sさん
せやったか?「好きです」って言うとった気がするけどなぁ
かめ
そんなことないですって~!
Aちゃん
ちょっと。

ごうくん、どういうこと?

かめ
Sさんが嘘ついとる。僕はあんなこと言うとらん。落ち着けぇ~、Aちゃん。僕はね、そんな浮気性の男ちゃうよ。Aちゃんが思うようなことは何にも起きてないよー。安心してー。僕は無実や…
Sさん
?お前、オレが嘘ついたって言うとるんか笑?
かめ
嘘ついたとは言いませんけど!
Sさん
じゃあ何や笑?
Aちゃん
ごうくん、ひどい…
かめ
えぇぇぇぇ…………
Sさん
これ以上いじめたら可哀そうやけぇ止めといたるわ。かめちゃん、今年もNちゃんのとこ行ってアレやってこい
かめ
アレって、アレですか?ゾウの鳴き真似ですか?
Sさん
せやせや。Nちゃん、今年も聞きたがっとるで。聞かしたれや
かめ
はぁ (聞きたがってないやろ笑…)

と、2年連続で山口チームのもとへゾウの鳴き真似に行かされました。

山口チームの厩舎は今年も広島チームの真隣に位置。私が死ぬほど弄られている声が全部筒抜け、丸聞こえです。しかもなぜだか知りませんが、私がAちゃんと別れたことも全員ご存じでいらっしゃった (Sさんが漏らしたのかな…?)。ウマの業界は怖いですね。どこから情報が伝わるか知れない。国体参加も今年で4年目。大人からの無茶ぶりには慣れっこ。恥じらいを捨ててNさんのもとへ行って『パオーン!!』とどデカく鳴きました。山口の方、Nさん含め優しいですから、今年も大笑いして「頑張った!」と労いの声をかけて下さりました。

 

国体期間中 (10/1~10/5)

【私とYくんの大会出場予定】

1日目) 10/1:成年男子ダービー競技 (Yくんだけ出場)
2日目) 10/2:成年女子ダービー競技 (Yくんだけ出場)→少年標準障害飛越競技→少年団体障害飛越競技 (自分だけ出場)
4日目) 10/4:少年ダービー競技

 

最後の国体は今までと違い、一日で2競技に出場しました。初日・二日目とYくんのダービー出場を見届けたのち私の競技がスタート。最初は標準。そして団体。人馬共にハードスケジュール。三日目はオフ。馬を一日休めて4日目の最終競技。泣いても笑っても最後のダービー。気持ち良く終われるかが焦点です。

 

一日目、二日目とYくんがダービーへ出場。Yくん、順調に2競技とも何事もなく帰ってきました。高い障害をちゃんと飛越し水濠にも入れるなどオールマイティー。本当に優秀。やっぱりいい子。 (自分もちゃんとやらなきゃな!!)と走行を見ながら気持ちが入った。

2人のダービーの後に標準へ出場。待機馬場で馬に乗って走った感覚も普段と同様。 (ちゃんとやれば大丈夫そうだな)と少し安心感を抱けました。Sさんに「行ってこい!」と送り出されて競技場へ。第一障害を軽々と飛越。右に曲がって第二障害の三段オクサーへと向かいます。しかし、ココで目がかすみました。「うわっ」と小さく声が漏れる。

同様なことが高2でもあった。高2の8月、蒜山で出た120cmの経路走行中に障害前で突如、目の前がぼやけた。視界にモザイクがかかったよう。障害までの距離を掴めない。すると踏切位置を合わせられない。高2ではその障害の前で馬に拒止されてしまいました。原因は受験勉強による眼への負担。眼を使いすぎた挙句、眼がおかしくなったのです……

同じことがいま起こりました。距離を測れず第二障害の前で拒止。 (やべ~、止まらせちゃった…) と頭が真っ白に。目をこすり、視界を回復し、もう一度第二障害へ挑むも拒止。国体で初めて失権してしまいました。障害を一個しか飛越できずにあっけなく出番が終わったのです。

これまで1年間、この症状が出なかっただけについつい油断してしまっていました。”たぶん大丈夫だろう”と競技前に目薬を差さずに出たのです。高2・10月の国体で症状が出なかったのは目薬を差して出走したから。今年もちゃんと対策をしておきゃ失権せずに済んだかもしれない。 (何でいま?どうして今日?)と運の無さに泣きました。よりによって最後の国体のレース中に霞まなくてもいいのに。落ち込んでばかりはいられない。次の団体へ向け再度気持ちを作り直さなきゃいけませんから。

 

団体はAちゃんと2人で出場。最初で最後の共同作業。目薬を差し、万全を期して馬場へ下見に向かいました。こんどこそは走り切る。流石にこのままでは終われない。一回戦の相手は東京。東京の馬に乗った東京の選手が拒止・落馬したときは正直焦りましたが、乗り替わってその馬で一落下にとどめてフィニッシュ。この時点で8位以内の入賞は確定。あとはどこまで勝ち進み、どこまで上の順位へ行けるかの勝負。

少年団体障害飛越競技 一走目の走行映像

 

二回戦の相手は愛媛。愛媛の馬 (ヴァレリー)、なんと昔、Aちゃんが競技へ出るときいつも乗っていた馬でした。ヴァレリーはスプラッシュの隣の馬房からスプラッシュによくちょっかいを出していた。顔や体型、走り方もスプラッシュと非常に似通っていました。とはいえヴァレリーへ乗るのは私。内心、(僕じゃなくてAちゃんが乗ればえぇやん)と思っていたけども私。

ヴァレリーのもとへ乗りに行くと、MRCでお世話になっていたDコーチが「おぉ、久しぶりやん!」と声をかけて下さりました。Dコーチは愛媛チームなので今回は対戦相手と言うことに。Dコーチ、「お前、ヴァレリー乗るの得意そう。スプラッシュに乗ってたもんな!」と声をかけてくれる。おそらく得意だとは思いましたが、「いや~、分からないですね~。とにかく頑張ります!」と応じる。待機馬場でヴァレリーを走らせてみると、ヴァレリーへ乗るのが不得意になっていることにすぐさま思い至りました。この半年間、外国産馬・Yくん仕様の乗り方に慣れていた影響か、ヴァレリーのような小柄な国産馬の乗り方を忘れていたのです。待機馬場での手応えは微妙。 (大丈夫かなぁ…)と不安を抱きながら本馬場へ。経路走行では3落下。全然大丈夫じゃありませんでした。Yくんとヴァレリーとではストライドが全く違います。踏切位置の合わせ方も当然変わってくるのですが、乗り替わり後の練習中に感覚を上手く調整できなくて失敗

少年団体障害飛越競技 二走目の走行映像

 

広島チームは二回戦敗退。厩舎に帰り、Aちゃんへ「ごめん…」と深々頭を下げました。私が一落下以下にとどめておけば三回戦 (準決勝)に進めました。団体競技でまたやらかした。去年はリレー、今年は団体…… それでもAちゃん、なぜか嬉しそう。こっちは悔しくて泣きそうなのに。「どうして喜んでるの?」「2人で7位になれましたから^ ^!」 マジで泣かせてくれるじゃないですか… 入賞してコレだけ喜んでくれるのならもうちょっと上の順位に行きたかった。そうしたらもっともっとAちゃんを喜ばせてあげられたのに。競技終了後、二人で表彰式へ。Aちゃんは飛び切りの笑顔で表彰台に立つも、私は情けなさと申し訳なさとで前を向けませんでした。

 

三日目の休養日を挟んで運命の四日目を迎えます。ラストの国体、ラストの競技とあって朝から今までになく緊張。早朝、霧のかかった三木の馬場を見て「ココも今日でおしまいか」と声を漏らす。中1から今日までの競技人生がまるで走馬灯のように目の前を駆け巡る。ダービーは15:05から開始。その20分前から下見が始まり”下見も最後か…”と感慨深く。今回のダービーはこの4年間で最長のコース。過去に出た国体では規定タイムが90秒ほどだったのに、今回はそれより30秒も長く設定されていましたから。感慨にじんわりと耽るどころか、コースを覚えるので精一杯に。逆に良かったかもしれません。競技前に気持ちを緩めずシャキッとした気分を保てたから。

下見後、Yくんを厩舎で馬装。厩舎でまたがり馬場まで行こうとしたら、山口の美人なNさんが「最後の国体、頑張ってね^ ^」と笑顔で応援してくれた。「はい、頑張ってきます^ ^!」と笑ってお返事。 (やった、Nさんに応援してもらえた…!!!)と内心、テンション爆上がり。馬場にてSさんに乗っていただく。出番7頭前でSさんと乗り替わり。「今度こそちゃんと気合入れて行けよ!」とSさんに檄を入れられる。「はい。次は死んでも帰ってきます!」と声を枯らして応じました。待機馬場では2日目と同じく良い感覚でYくんに乗れた。 (ダメだ、絶対に油断したらダメだ)と出走まで気を引き締め続ける。

いよいよ自分の出番になった。Sさん、後ろから「後悔の無いようにな!」とエールを送って下さった。審判団に敬礼し、二回大きな深呼吸。目を瞑り、「ベストを尽くすぞ」と自分に言い聞かせ、駆歩で一周大きく輪乗りをしたのち第一障害に向かいました。第一、第二障害と何の問題もなく飛越。目の霞みも出てきそうな予兆が一切ありません。第三障害は何の変哲もない100cm程度の垂直障害。普通ならあっさり飛び越えられた所ですが、チェックが甘かったせいか、踏切位置が少し近くなって落下。私の出走前までにダービーを数人馬が減点ゼロでフィニッシュしています。よって、一落下した時点でジャンプオフへはコマを進められなくなったのです。優勝の可能性は完全に潰えた。横木の落ちる音が後ろから『コロン…』と聞こえた際、(マジか…)と気分がガックリ落ち込み全身から力が抜けました。それでもまだまだ終わっていない。”せめて残りの障害を落とさず回ってやろう”と注意力を一層高めての走行。いくつか落としそうな障害があるも、落とさず越えて無事にフィニッシュ。ゴールタイムはゾロ目の111秒11。青春の最後を締めくくるに相応しい自分史上最長のレースでした。

少年ダービー競技 走行映像

 

終わってから

待機馬場へ戻ってきて、Sさんからひと言、「この1年間、楽しかったか?」と。「はい、す~んごく楽しかったです^ ^!」と自分なりの笑顔で応じました。

思い通りの結果は残念ながら出せませんでした。失権に一落下、団体では三落下など、最後にして一番ひどい成績で終わってしまったのは悔しいです。しかし、高2で国体を終えてしまっていては得られなかったであろう充実感が。新しいチャレンジ、受験との両立、Aちゃんとの国体出場など、全てが私の胸の中で燦然と輝きを放つ宝物。2月から約半年間、【もう一度国体の個人戦で表彰台に立つ】という夢を追いかけられました。夢は叶わなかったものの、おかげで情熱を完全燃焼できました。大変スッキリとした心持ちで受験へ向かうことができます。乗馬の次は京大だ。京都で夢の続きを作るんだ。

失敗の言い訳にできないほどSさんらには馬を仕上げて頂きました。Sさん、本当にありがとうございました。あれほどの馬のコンディションで失敗したらそりゃ100%私の責任です。Yくんを乗りこなすには今ひとつ技術が至りませんでした。ヘタクソでホントにすみません。欲を言えばもっと練習して臨みたかった。あと1年あれば、、、と思います。いや、せめてあと半年早くYくんに乗り始めていたらなぁ……

『国体で失敗したのも良い思い出だな』といつの日か達観して振り返られるようになりたい。失敗してそりゃ当然、悔しいのに違いはありませんが、最大限懸命に練習してこの結果だからもはや仕方がありません。凡才の自分が国体で一回勝てただけでも大収穫。全国の頂に立つべく駆け抜けた中3~高3の4年間の記憶を、この先何があろうと一生忘れず大切に胸の内へとしまっておきます

 

国体入賞全戦績

  • 2012 岐阜国体 (中3 with スプラッシュ)
    少年 二段階障害飛越競技 優勝🥇
    少年 ダービー競技 3位🥉
    少年 団体障害飛越競技 8位
  • 2013 東京国体 (高1 with スプラッシュ)
    少年 ダービー競技 5位
  • 2014 長崎国体 (高2 with スプラッシュ)
    少年 リレー競技 6位
    少年 スピードアンドハンディネス競技 7位
    少年 ダービー競技 7位
  • 2015 和歌山国体 (高3 with Yくん)
    少年 団体障害飛越競技 7位

 

青春駆ける第9巻・高3編はコレでおしまい。次回は最終巻・大学生編。夏休み最終日の8/31に投稿します。

最終話 大学生、青春駆ける|青春駆ける ~馬術に情熱の全てを捧げた10年間の成長の足跡~

2023-08-31

 

Aちゃん画像の引用文献
カルピス株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)

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