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vol.9 高校3年生、夢に破れる|青春駆ける ~馬術に情熱の全てを捧げた10年間の成長の足跡~

国体

2~6月:Sさんの乗馬クラブにて

2~4月:外国産馬特有の走り方に感覚をなかなかアジャストできない

国体への最後の挑戦をするため2月から練習を再開しました。国体で私が乗せて貰える外国産馬 (Yくん)に乗ってのレッスン。スプラッシュとYくんとでは体の大きさが全然違う。Yくんの方が二回り大きく、走る時、騎手の感じる反動が段違いに大きいのです。スプラッシュが前方へパーッと走るタイプなら、Yくんは一歩ずつドタッ、ドタッと大きく刻んでいくような感じ。最初に乗った時は腕を持って行かれそうになって (この力強さはすげぇな…)と驚愕した次第。スプラッシュとコレだけタイプが違えば乗り方も変えねばなりません。馬への合図、騎乗中の姿勢、手綱の力加減など、これまで培ってきたほぼ全ての技能をYくん仕様にリニューアル。コレがまたえげつなく難しい。4年半もスプラッシュに乗ってきたため、私の骨の髄までスプラッシュ仕様の乗り方が染みついていたからです。

2~3月はYくんを全く自分の思惑通りに動かせませんでした。理想を100%とすれば20~30%の到達度。傍から見れば障害をちゃんと飛べているし、(一体何の不満があるんだ?) と思われたかもしれない。でも馬に乗っている自分としては、

  • ココでもうあと1mぐらい奥側を回って走りたいんだけどなぁ
  • 障害前でバタバタせずに落ち着いて走りたいんだけどなぁ

といった細かな点が気になって仕方がありませんでした。何をどう変えなきゃいけないのかは頭でよ~く分かっていた。しかし体が言うことを聞かない。どうしてもスプラッシュ仕様の乗り方になる。 (ヤバいな、国体に間に合わないかも)と少しだけ焦りを募らせていました。

4月、三木にて110cmへ出場。初日は減点ゼロ、翌日は1落下でのフィニッシュ。両日ともYくんの走りやすいペースを作ってあげられませんでした。Sさんから「ペースを上げろっ!」と指示されたのに上げきれなかったのです。馬が変われば走り方 (フォーム) が変わる。走り方が変われば体感速度が変わる。Yくんはストライドの大きな馬。スプラッシュより一歩でより遠くへ進むから、騎乗中は普通に駆歩をしていても (速いんじゃないかな)と思いがち。しかしそれはトラップです。歩幅は大きくてもピッチは小さい。普通にパカパカ走っていたら普通より遅めのペースになる体感速度と実際の速度の大きな乖離が最大の課題。

MD 1日目走行映像

 

5~6月:クラブで練習。感覚が合ってきた

5月と6月もSさんの乗馬クラブ内にて練習。Yくんに乗せてもらったり、クラブの馬に乗せてもらったり。おかげで少しずつ感覚がアジャスト。6月にはクラブ内にて120cmの経路走行ができました。難しく考えすぎないようにしたのが一番良かったです。スプラッシュの感覚を修正しようとするのではなく、Yくんに乗る感覚をゼロから培っていくイメージで練習。体感速度も一度リセットしゼロベースへ。Sさんのレッスンで「コレが普通のペースや!」と教えてもらった速さを”普通なんだ、当たり前なんだ”と体へ叩き込んだのです。

ようやく普通に乗れるようになると、Sさんらから新たに高度な技術をいくつかご教授いただきました。コースを回るうえで重要な考え方まで教えてもらい、 (上手い人ってこんなことまで考えて乗っているんだなぁ…) と感動。私がこれまでどれだけいい加減に馬へ乗ってきたかが分かりました。再現性のない、その場しのぎの技術しか持っていなかったのだと思い知った。ここまで私はI先生やMさんの傍に立ち見よう見まねで乗馬してきた。口頭で技術を教えてもらえる機会は殆どなく、 (こうやって乗ればいいのかなぁ…?) と自分なりの解釈で技術をモノにしてきたのです。Sさんの指導は違いました。聞けば聞くほど教えてくれたし、言葉で説明してくれたから分かった。I先生らとワチャワチャしながら上手になっていくのも楽しいけれど、Sさんのように体系立てて論理的に説明してくれれば分かりやすい。

 

Sさんの乗馬クラブで練習しているとある日、そこにいるはずのないAちゃんがクラブへやって来たのです。Aちゃんの姿を見たときは最初、 (受験勉強のやり過ぎで頭がちょっとおかしくなったかなぁ) と思いました。自分の眼が信じられなくて何度もAちゃんを確認しました。どうやら本当にAちゃんがいるみたいで何が何だか分かりません。「どうしたの?」と事情を聴いてみました。するとAちゃん、「私もココで乗ることになったんです^ ^!」と笑顔で言うじゃありませんか。「えぇぇぇ~~~?!」腰を抜かすほど驚きました。私の存命中にAちゃんの顔を見ることはもう二度とないのだろうなと思っていたから。しかもAちゃん、なんと今年の国体に出るらしい。「今年?」「はい!」「…今年??」「はい!!」しかも同じ都道府県からの出場みたい。

はてさて、一体どうしたものか。嬉しいやら嬉しくないやら頭がグチャグチャになってきました。Aちゃんを振って後悔していたからまた会えてすごく嬉しかった。私の目を見て口を利いてくれ、しかも笑い顔まで見せてもらえた。ただ、Aちゃんを見ると気持ちが揺らぐ。なんせ5か月も私の彼女になってくれた大事な人だから。乗馬だけに集中しようと思っていても難しい。付き合う前のこと、付き合っている時のことなど色々思い起こされて苦悶。レッスンではなるべく馬の耳の間からだけ前を見るように。Aちゃんの方をなるべく見ず、意識を馬と己の体の感覚だけに割き没入するため。

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