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沖縄100Kウルトラマラソン2018 体験記

レース(日曜)

Plan:抑えめに走って10時間以内にゴール
Shoes:ウエーブエアロ16

前半

煌々と照らされた与那古浜公園を後にし、支給されたハンディライトを片手に真っ暗闇へと飛び込みました。

スタートの興奮もあってか、周囲のランナーがとんでもないスピードで追い抜いて行きました。

ついついペース感覚が乱されてしまい、最初の何キロかは想定よりもかなり速いペースで突っ込んじゃいました。

2kmほどで海岸線へ。湿度が高く、早くも汗をかき始めました

 

7.5km、最初のエイドがやってきました。

エイドのトイレに一直線に駆け込み、スッキリしてからエイドのスポドリを頂きすぐさま出発いたしました。

最初の激坂は13km地点にありました。

まだ真っ暗で体も目覚めていない状態なのに、高低差100mの急坂に苦しめられました。

これからこれと同じような激坂を何度も通過せねばならないのか..と一瞬絶望させられました。

しかし、

かめ
こんなえげつない坂、札幌じゃお目にかかれないよな。いっぱい坂走れてめちゃめちゃラッキーやん!!

とどこかで思う余裕もありました。

 

16km過ぎに太平洋の遥か彼方から太陽が顔を出してきました⇩


註:フリー画像です

こんなきれいな日の出なんて見たことがありませんでしたから、「大自然ってすごいなぁ…」と圧倒的な力に鳥肌を立てながら感動しておりました。

この日の出を見られただけでも沖縄に来た価値がありました。

20km通過は1時間49分57秒 (5’30″/km)。少しだけ速いけれどもまだ想定ペースの範疇です。

 

20.8kmのエイドのトイレで用を足し、ミカンとバナナを頂いてエネルギーを補給しました。

エイド通過後、2kmほど走っていると、横から一人のランナーさんに声をかけられました。

少しだけ会話し、声をかけて下さったおじさんと並走することになりました。

同じようなペースで走っていたランナーも続々と私たちの前後にくっつき、7人程の集団を形成して先を進むこととなりました。

26kmあたりの奥武島では、高低図にないアップダウンがありました。

そこの下りでスピードを上げすぎ、自身のオーバーペースにふと気付いて減速してゆっくりペースに戻しました。

30km過ぎから2つ目の激坂。高低差100mを上って下るハードな道です。

帰りも同じ道を走るので、道の起伏を確かめておきました。

 

35kmのエイドではもろみ酢をゲットしました。

酸っぱさが疲労を紛らわせてくれ、おかげでかなり生き返りました。

この時気温は20度越え。暑さでダレていた中、気分が幾分シャキッとしてきました。

40km通過、3時間36分29秒。この20kmは1時間47分2秒。

相変わらず5’30″/kmペースで走れています。

少し速くなったのは誤差だとして、それよりも少しずつ痛み出した左足が気がかりでした。

その後集団はバラバラとなり、先ほど声をかけてくれたおじさんと何キロか並走いたしました。

おじさんからコースのポイントを色々教えてもらいつつ、あっという間に中間点の糸満市役所に到着しておりました。

50km通過は4時間27分40秒。この10kmは51分11秒8 (5’07″/km)でした。

いくら何でも速すぎです。特にペースを上げたつもりはなかったのに、おじさんとのおしゃべりに気を取られてついオーバーペースとなっていました。

 

過ぎてしまったものはどうしようもありません。

飛ばし過ぎたことを悔い改め、レストステーションでおにぎりと果物を食べて後半の戦いの備えました。

預けておいた荷物からは経口飲料水とVAAMゼリーを取り出しました。

ゼリーに関してはその場で摂取し、経口飲料水はボトルを持って飲みながら走ることに決めました。

 

後半

レストステーションを出てすぐ、左のハムストリングが痙攣を起こしました。

原因はスピードの出し過ぎです。レストステーションで元気になった私はついつい予定よりキロ30秒も速く走ってしまっていたのです。

かめ
ペースダウンペースダウン。まずは落ち着こう

心へこのように言い聞かせました。

何キロかすると痙攣はおさまり、今まで通り走れるようになりました。

56km、今度は左ふくらはぎに刺されたような鋭い痛みを感じました。

どうやら脱水状態になってしまったようで、水分補給には気を付けてきたつもりだったものの、十分ではなかったことに思い至りました。

少しずつ判断が鈍り始め、上の瞼が上がらず視界が狭くなってき始めました。

60km通過、5時間22分58秒。この10kmは55分18秒(5’32″/km)でした。

 

68kmのエイドでコーラが出現!疲れている時に飲むコーラは最高に美味しいんです。

普段は甘くて受け付けない味でも、ウルトラの70km付近ともなるとこのジャンキーな味がたまらないんです。

炭酸で口の中をすっきりさせ、ラスト30kmへと駆けだしました。

70km通過後、上を見上げると太陽が真上から照射していました。

と同時に私の足に痙攣が走り、やがてランニングを続けるのが難しくなりました。

 

80km通過、7時間35分7秒。この20kmは2時間12分9秒 (6’36″/km)。壮絶な行軍が始まりました。

脚が終わったので全く走ることができないのに加え、気力が尽きかけていたため歩くのですら大変な状態でした。

キロ9分ぐらいの早歩きでひたすらもがき、痛くて止まりたがっている足をなだめながら進んでいきました。

かめ
マジかよ、ここからあと20kmも歩くのか…

こう思うだけですごく辛くなりました。

84km過ぎ、コース最大の激坂を全部歩いて上りました。

100mほどのトンネルを抜けると、眼下にはキラキラと輝くエメラルドグリーンの海が全展望に広がっていました。

ニライカナイ橋から見える景色は最高でした。しかし、こんな良い景色が広がっているのに一歩も走ることができず、ふがいない自分が情けなくて仕方がありませんでした。

ニライカナイ橋の真ん中あたりで、前半一緒に並走していたおじさんに追い付かれてしまいました。

おじさん
走れ、若者!!!
かめ
走れないんです…

おじさん
じゃあ絶対にゴールにたどり着け!!

おじさんも足が痛いはずなのに、おじさんは颯爽と追い抜いて行きました。

幾多の荒波を乗り越えてきたおじさんとはなんと強い生き物なのでしょうか…

私もあんなカッコいいおじさんになりたいものです。

 

90km通過。走れないのでヨタヨタ歩いて先を目指しました。

92km手前のエイドでは、エイド1km前から「2週間前にNAHAマラソンを完走したんだ」と地元のおじいさんがニコニコ笑いながら並走してくれました。

並走中、

おじいさん
北海道から来てくださってありがとうございます!

おじいさん
完走するだけでも本当にすごいことですから、焦らずゆっくりと進んでくださいね

おじいさん
あなたならできる!絶対できるよ!!

と何度も励まして下さりました。

しかし、話す気力すらなかったので頷くしかできず、(おじいちゃん、ごめん)と本当に申し訳なくなりました。

並走終了直後のエイドでは、足を痛めている私に地元のマダムたちがエアーサロンパスを吹きかけて下さりました。

すると、みるみるうちに痛みが和らいでいき、おかげで完全に息を吹き返しました。

20kmぶりぐらいにランニングを再開しました。最初はキロ7分半程度でしたが、徐々にスピードアップして最終的にはキロ5分程度まで上げられました。

97.5km、最後のエイドは、スルーする決断を下しました。

(ここで止まってはまた足が痛くなる)と思い、「今までお世話になりました~!」と大声でお礼を言って通過させてもらいました。

 

最終エイドを過ぎたあたりから、不意に涙が溢れ出ました。そしてそれはやがて号泣に変わりました。

・小学生の時「デブ!」と散々いじめられてきたこと
・中学生になってもっと苛烈にいじめられたこと
・いじめに一切反撃できず情けなく思ったこと
・京都大学に不合格となり、1年間もニートとして実家に寄生していたこと
・大学生になって何のサークルにも入らず、長期休暇のたびに浮かない顔をして実家に帰省していたこと

こんな放蕩息子を大事に育ててくれた両親への感謝の思いが、ゴール目前にしてブワ~っと湧き上がってきたからです。

今まで自分は”一人で生きてきたのだ”と思ってきました。

しかし、実は陰で色々な人が私を支えてくれていて、他人の支えなしでは今の自分はなかっただろうと感じました。

自分の人生の主人公は自分ですが、親を始めとした私のサポーターなしではまず生きてこられませんでした。

辛いことも数多く経験しました。(なんで自分だけこんな理不尽な目に…)と毎日思っていました。

でも、それらは全て、何か意味のあることだったのだろうと思います。

そしてその意味とは、”ここで感謝の思いを味わい、周囲の支えの有難みを知るためだったのだろう”とこの時ようやく意味を見出すことができました。

 

周りの人への感謝の思いを胸に、ラスト1kmを全速力で駆け抜けました。

フィニッシュテープが見えた時、もっと加速してラストスパートをかけました。

そして……ゴール!!!

記録は10時間19分19秒。目標の10時間切りには遠く及びませんでした。

しかし、精一杯頑張った結果なので仕方がありません。

悔しさももちろんありましたが、それより100km走り切った充実感が圧倒的に大きかったです。

あ~、悔しい!でもフィニッシュ直前に辛かった過去の意味を見出せられて本当に良かったと思いました。

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