馬術競技から研究とマラソンに転向した化学系大学院生かめ (D2) です。2024年11月の福知山マラソンで自己ベストを4分46秒更新し、2時間42分14秒でフィニッシュしました。
本番用シューズはアディゼロジャパン8。自分と同じスタートブロックには厚底シューズを履くランナーばかり。悲しいかな、自分に厚底シューズは合いません。ソールの屈曲がロックされた厚底を履くとたちまち足底筋膜炎になるのです。とはいえ、ジャパン8でも2時間42分台を出せました。スピードにもクッション性にも何の不満もないし、今後のフルマラソンでもジャパン8で走るつもりです。
さて、この記事では、マラソンで2時間42分を出すために行った練習と使用した3足のシューズ紹介をします。
- シューズの使い分けでお悩みの方
- 2時間45分切りを目指していらっしゃるシューズ難民の方
こうした方々にピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。
Contents
ジョグ&中強度走:ライトレーサー5
ジョグ:90分間、淡々と走る
自分の基礎練習は90分ジョグ。鼻で四回吸い、鼻で四回吐けるゆったりペースで淡々と距離を踏み、持久力と脚筋力の基礎を日々着々と築き上げていきました。具体的なペースは4’40″~5’10″/km。身体の調子や気候コンディションに応じ、力を入れず楽に走れるペースでの走行を心掛けていました。
自分の場合、本番でアディゼロジャパン8を履こうとレースの半年以上前から決めていました。ジャパン8は中底シューズ。クッション性は薄底以上で厚底未満。中底とはいえ着地衝撃はあります。一歩ずつ足へ着実にダメージが蓄積されていくのです。30km以上走ればそれなりに脚が重たくなってくるでしょう。まして、42.195kmを失速せず走り抜きたいなら、何万歩もの強い着地衝撃に耐えられる強靭な脚筋力の養成が欠かせません。
ジョグに用いたのは薄底シューズのライトレーサー5。ジョグを薄底で走り、ジョグ自体を耐着地衝撃能力養成の場としたのです。一度のジョグで走るのは18~20km。マラソンの半分程度の距離を薄底で走ります。シーズン始めは練習後に前腿へ疲労感がありました。練習を重ねていくにつれ前腿が着地衝撃に強くなってきて、練習開始三か月後にはもう90分ジョグで疲れなくなりました。アディゼロジャパン8でフルマラソンを走り切れたのは、普段からライトレーサーで鍛錬していたから。次の章でご紹介するもう一つの練習用シューズばかり使っていたら、レースでは中盤あたりで前腿が終わっていたことでしょう。
中強度走:キツいとキツくないの狭間を狙って80分程度走る
ジョグ以外の基礎練として中強度走も行いました。中強度走とは、感覚的にキツいペースとキツくない速さの狭間を狙って走る練習。自分の中強度ペースは4’00″~4’15″/km。コチラもジョグと同様、走行ペースはその日の調子に応じて練習時に決めていました。走行時間は75~90分。レースまでの期間が迫って来るにつれて徐々に時間を増やしていったのです。
中強度走もライトレーサー5で実施。ある程度のスピードを出し続け、長距離の着地衝撃に耐えられる足を作るのが目的。ジャパン8はライトレーサーよりキロ10秒程度速く走れます。ライトレーサーで4’10″/kmを出す際の体感強度は、ジャパン8の4’00″/kmペースとほとんど同様なのです。中強度走からジャパン8に甘えていては力がつかないのではないかと考えました。助力の少ないライトレーサーで中強度走をこなしておけば、ジャパン8でレースペースを出しても楽に走れるだろうという魂胆。実際、ジャパン8で走った本番では、苦しくなる前まではジョグとほとんど同じような感覚で走れました。失速したのは別の因子が要因。ライトレーサー中強度走作戦は効果があったように感じます。
ロングジョグ&起伏走:ウエーブライダー27
毎週末、2時間以上連続で走りました。マラソンのフィニッシュタイムに相当する時間だけ身体を動かし続ける訓練です。
マラソンは結局、スタミナ勝負。どれほどスピードを出せる人でも、身体を前へ進ませるための持久力がなければ始まりません。基礎練の90分ジョグだけでは足らないでしょう。もっと長く、2時間、3時間もの練習をこなさねば、実戦で使えるレベルの持久力を培えません。上でご紹介した基礎練習は、長い距離を走るための土台になる能力を培うためのもの。充実した基礎練を行うことで長時間走れるようになり、長時間走り続けられるようになって初めてマラソンで自分の望む記録を狙えるのです。
私が行っていた長距離練習はロングジョグと起伏走とロングランの三つ。この章では前二つについてご紹介します。
ロングジョグ:2時間以上、平地をゆっくりジョグする
ロングジョグは、ジョグペースで長い距離を淡々と踏んでいく練習。基礎練習のロングバージョンのようなイメージ。練習前に「今日は〇〇〇分走ろう」と決めておきます。終盤では多少ダルくなってくるけれども、そこを耐えて我慢しながら走るとスタミナが高まるのです。コースは平地。起伏は入れません。あくまで身体を動かし続けられるようにするのだけが目的だから。最終的には200分ジョグまで走行時間を延長しました。ペースはキロ5。40km走った計算になりますね。
起伏走:2時間以上、起伏をヒーヒー言いながら走る
起伏走は、ロングジョグの起伏バージョン。ジョグペースで起伏の激しいアスファルトコースをヒーヒー言いながら走っていく練習。上り坂では心肺機能と推進力が、下り坂では着地衝撃に強い脚が手に入ります。負荷の強い、メチャクチャ大変な練習。走り終えたらグッタリします。でも、頑張った分だけ大きな効能が得られるでしょう。普段の起伏走は120分間(600m D+)。一番頑張ったときは180分間(1100m D+)走りました。ロングジョグと起伏走の練習頻度は2:1の割合で実施。ロングジョグで長時間走る基礎を作り、起伏走でもってそれをより実戦的なスキルに転換していくイメージ。
シューズはウエーブライダー27
ロングジョグと起伏走にはウエーブライダー27を使用。ウエーブライダーは従来型の厚底シューズ。クッションはフカフカ。着地時のブレは極小。最高のフィット感と安心感でもって練習を土台から支えてくれました。アシックスのGT-2000 12も試してみたものの、ミッドソールが柔らかすぎて自分には合わなかった。ライダーの28も柔らかすぎてイマイチ合わない。我儘な自分の希望を叶えてくれるのがライダー27。今後とも長時間の練習でずっと使っていきたいシューズです。
CVインターバル&閾値走&ロングラン:アディゼロジャパン8
マラソンで2時間50分を切ろうと目論むならキロ3分台の練習が不可欠。2時間42分でマラソンをフィニッシュしたければ3’51″/kmの巡航ペースが必要。我々シリアスランナーは、42.195kmを3分台で走れなければなりません。1kmや2kmでは話にならない。42kmを通して3分台のラップタイムを刻み続けられる走力が必要。練習無しだとキロ3分台では走り切られないでしょう。事前に十分なスピード練習を行い、万全の態勢でもって本番に臨む必要が。
私がサブ45するために行ったスピード練習は2つ。CVインターバルと閾値走です。
CVインターバル:10000m続けて走れるペースで1000m×8 or 2000m×4
最近、SNSでは「CVインターバル」が流行っています。CVインターバルとは、その日10000m続けて走れそうなペースで1000mや2000mを間欠的に走る練習のこと。走行速度は閾値ペースよりかは速く、VO2インターバルの速さよりも遅めの設定。そこまで苦しくない練習なので、走行前に憂鬱になりません。故障のリスクも小さめに抑えられます。何か月間も継続的に取り組める絶妙な負荷を身体へ与えられるのです。
CVインターバルは週1で行いました。週2だと多すぎて故障のリスクをぬぐい切れず、週1ぐらいが自分にちょうど良かったからです。シーズン初のCVインターバルは1000m×8を3’35″/kmペース(レスト90秒)で実施。それをクリアすると次はレストを75秒に設定。その次はレスト時間を戻して3’30″/kmで。その次はレストを減らし、その後は3’28″/kmで、といった感じで段階的にレベルを上げていきました。次の節でご紹介する閾値走へスムーズに繋げるにあたって、走行区間を二度ほど2000mにして練習しました。連続走行区間が長ければ長いほど閾値走と似たものになりますから。
最終的に、1000m×8を3’24″/km(レスト60秒)で、2000m×4を3’30″/km(レスト90秒)でこなせるように。CVインターバルで心肺機能と脚力を引き上げてから閾値走へと取り組みました。
閾値走:ギリギリ辛くないペースで8000m~10000m走る
閾値走とは、足へ乳酸が大量生成され始める境目のペースで一定時間走る練習。ダニエルズさん曰く、20分ぐらいの走行時間がオススメだそう。閾値走を行うとハイペースで長時間巡航できる力がつきます。レースでも疲れてきてからのひと粘り、いや、ふた粘りが可能に。色々な方が「閾値走はスピード持久力のつく練習だ」と言っております。私自身、閾値走を繰り返し行い、CVインターバルでつけたスピードとロングジョグでつけたスタミナを融合させてからレースに臨みました。
閾値走の前はひどく憂鬱に。それもそのはず。口からゲロが出てしまいそうなほどキツいから。練習中も予定走行時間の半分を過ぎるまでは辛くて仕方がない。「誰だよ、こんな練習メニューを立てたヤツは…」「あぁ。もう、早く終わってくれよ…」とやるせない気分に。半分を過ぎたあたりで悟りが開かれます。身体が閾値ペースに慣れてくるのか、調子が上がってきてフッと楽になるのです。そこから最後までは勢いと執念で乗り切りました。練習終了後に訪れる解放感がたまらなく気持ち良いのです。
閾値走は、CVインターバル期間終了後、本番前までに計5回(週1回)行いました。体感強度はすべて同じ。進捗の度合いは以下の通り⇩
- 一回目:3’35″/kmで8000m
- 二回目:同上
- 三回目:3’35″/kmで10000m
- 四回目:3’32″/kmで8000m
- 五回目:3’32″/kmで10000m
レース前の最終的な目標は3’30″/kmで10000m。今シーズンはそこまでのレベルには至らなかった形。3’30″/kmなら6000mが限界だったはず。速くて短い閾値走をするのはなかなか気が進みませんでした。少しペースを落としてでも長く走った方が閾値改善に効果があるのではないでしょうか。来シーズン、6000mの閾値走も行い、その効果も試してみたいと考えています。
スピードを出すもう一つの練習としてロングランを行いました。
ロングラン:キロ4ペースで30~42km走る
我々ランナーは本番にて、長い距離をそこそこのペースにて走る必要が。スタミナの養成はロングジョグや起伏走でバッチリ。マラソンペースの出力も、中強度走やCVインターバル、閾値走などをこなしていくうち楽になっていくでしょう。これだけでも本番で戦える態勢は整っているワケです。大半の方はそれ以外に練習をしなくて構いません。いや、むしろしない方が良いぐらい。過剰な負荷を与え、回復しないまま本番を迎えたら凡走は必至。
しかし、中には私のような心配性な方もいらっしゃるでしょう。「本当にこれだけで大丈夫なのかな…」「長い距離を走り切られるか不安だなぁ…」と不安が募ってくる人もおられるはず。自分自身、先述した練習だけで本番を戦えるのかどうか疑念がありました。まだやり足らないのではないか、もう少し実戦的な練習もすべきではないか、と。自分のこれまでの練習を信じ切られなかったのです。自己ベストを更新するにはもう少し練習しなければならぬのではないか、と思いました。
そこで行ったのがロングラン。レースペースよりキロ10~15秒ほど遅いペースで30km以上走る練習。ロングランでは終盤に糖質エネルギーが底を尽きます。急に脚が重くなるような感覚もあり、そのような状態が本番で訪れた際にどう戦うかをシミュレーション可能。ロングランは非常に負荷の高い練習。本番前までに何十回も行うわけにはいきません。自分の場合、本番四週間前に35km走(3’56″/km)を、本番二週間前に42.2km走(3’58″/km)を行いました。両方とも問題なく走れたおかげで安心して本番に挑めたのです。
シューズはアディゼロジャパン8
キロ3分台のスピード練習とロングランは全てアディゼロジャパン8で実施。本番で使うシューズで本番よりも速く走れれば自信になると思って。ジャパン8はキロ3分半でもヘッチャラ。キロ4ペースでの巡航も快適そのもの。軽くて反発力があるからか、着地した脚がクルクル回ります。正直、ヒールカップは頼りないけれども、着地時の横ブレやねじれは一切ありません。ジャパン8は本当に走りやすい。自分にとっては厚底シューズよりもジャパン8の方が速く走れます^ ^
サイズ表
当記事でご紹介したシューズの私が使っているサイズをご紹介します。参考までに、過去に使っていたシューズのサイズも併せて掲載します。
シューズ名 | 使用サイズ |
---|---|
ライトレーサー5 | 27.0 cm |
ウエーブライダー27 | 26.5 cm |
アディゼロジャパン8 | 26.0 cm |
⇩過去に使用したシューズ⇩ | |
ライトレーサー3 | 27.0 cm |
GT-2000 10~12 | 26.5 cm |
初代メタスピードスカイ | 26.5 cm |
ウエーブライダー25 | 26.5 cm |
ペガサス37, 39 | 26.5cm |
アディゼロジャパン4&5 | 26.5cm |
シューズは基本的に26.5cmを選んでいます。ライトレーサーは長さがややタイトなのでハーフサイズ大きいものを、逆に、アディゼロジャパン8は少し長めのデザインのためハーフサイズ小さいものを買いました。
まとめ
マラソンで2時間42分台を記録するにあたって、3つのシューズを目的に応じて使い分けました。基礎練習用のライトレーサー5で脚力を鍛え、ロングジョグ・起伏走用のウエーブライダー27で持久力を養い、スピード練習用のアディゼロジャパン8でレースに向けた実戦感覚を磨きました。練習内容は、90分ジョグと中強度走が基本。この2つで基礎体力を築き、ロングジョグと起伏走でスタミナを向上させ、CVインターバルと閾値走でスピードを獲得。そして、ロングランで本番を想定した実践的な走りを体験しました。
厚底シューズが主流の現代でも、自分に合った従来型のシューズを選び、計画的な練習を重ねることで目標に近づけます。皆様も、ご自身に合ったシューズと練習方法を見つけ、理想の記録達成を目指してください。