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【福知山マラソン2024】全てを絞り出した42.195km ─ 学生ラストレース2時間42分14秒

レース後

ゴール地点でお水とアリナミン7をいただいた。控室へ戻るまでに両方とも飲み干した。完走賞として千原ジュニアさんの描きおろしTシャツを入手。何とも言えぬ、非常に独創的なデザイン。おそらく見る人が見れば芸術的なのだろう。美的センスの皆無な自分にはその独創性を理解して差し上げられなかった。ベンチに座ってシューズから計測チップを外す。かがんだ瞬間に右のハムストリングが痙攣し、悶絶寸前の苦しみを味わった。

足を引きずって控室に戻る。人がほとんど居ない。そりゃそうか、まだほとんどの人が走っているのだもの。よっこらせっと床に腰を下ろす。ヘタに動くと足が痙攣して動けなくなるから、一つ一つの動作を慎重かつ丁寧に行った。リュックを開けて貴重品があるのを確認。靴ひもを解いてシューズを脱ぎ、靴だけ履き替えて控室を後にする。個室トイレで用を足す。服を全て着替え、顔を洗い、いつでも帰られる態勢を整えた。

控室の出口で会場係につかまった。スマホでQRコードを読み込んでアンケートに答える。スマホの電波が悪かったせいか、回答の途中で接続が切れてしまった。答えてあげられなくて申し訳ない。「最高の大会でしたよ」と念入りに伝えて散会。

42kmも走った後だ。お腹が空いていて当たり前。会場内には屋台が10店以上もある。焼きそばやステーキ、おにぎりにカレーなど、大好きな食べ物を出してくれるお店ばかり。スタート前から既にいい匂いがしていた。空腹を刺激され、お腹をグーグー鳴らしながらの出走だったから、フィニッシュしたあと絶対にどれか食べてやろうと決めていた。お腹を空かせて見に行ったらどこも品切れ笑。マジかよ。食べるもの、何にもないじゃん。エイドに戻って何か食べてやろうか。お腹が空きすぎて倒れてしまいそう。

本当は会場の中でもう少しゆっくりしたかった。秋空の柔らかい陽光のもと、ゆっくりとレースを振り返って激走の余韻に浸り、来シーズンをどんな一年にしようかなと考える時間にしたかった。あまりの空腹には耐えかねた。来年の展望は膨らめども、肝心のお腹はしぼむばかり。泣く泣く会場からの離脱を決断する。シャトルバスで福知山駅まで戻り、コンビニでおにぎりを買って貪るように食べた。

伊丹から札幌へ飛ぶ航空便を18:55に予約した。保安検査時間を考慮すると、18時過ぎには空港へ居る必要が。レースの後だというのに慌ただしい。会場内でまったりする時間など最初からほとんど無かったということか。福知山から京都への移動には特急を使用。14:42発のはしだて号に課金して80分弱で京都まで運んでもらった。

京都でコインロッカーを開錠。預けていた荷物をカバンに詰め込んだ。ロッカー番号の願掛けは無駄だった。こんな小手先のテクニックへ依存するよりも他にやるべきことはあったはず。次のレースはもっとたくさん練習して臨みたい。500kmだった月間走行距離を600kmに増やし、坂道でのインターバル走にも挑戦するつもり。

JRと阪急とモノレールを乗り継いで伊丹空港へ。乗り継ぎのたびに駅から駅へと移動するのが大変だった。階段の昇り降りが辛い。特に降りるのが辛い。着地するたびに足へ激痛が走る。スマホアプリの指定する乗り換え時間は筋肉痛でない人のためのモノ。42km走った人の事情なんかこれっぽっちも鑑みていない。筋肉痛人間専用の乗り換え時間も表示して欲しい。老人と同じぐらいの歩行速度で計算してくれれば構わないから。空港へ着いたのは17:40ごろ。よかった、間に合って。

空港内で一番好きな場所は展望デッキ。飛行機が離陸に向けて発するエンジン音の咆哮を聴くのがたまらなく好き。もう夜だというのに飛行機が次々と飛んでいく。さすが、大阪らしい賑やかな風景だ。遠くに見える大阪都心ではビル群が煌々と輝いている。まだ仕事しているのかな。今日は勤労感謝の日だというのに。来年からは自分もあちら側の人間になる。若者がブラブラ遊んで英気を養えるよう、裏側から陰で社会をどっしりと支えてあげたい。

飛行機に見惚れていたら保安検査場締め切り寸前の時刻に。大慌てで移動して事なきを得る。出発ゲートはナンバー8。お土産屋さんやフードコートから400m以上離れた所にある。ご飯を食べる時間はなさそう。千歳到着後、空いているレストランに入って夕食を楽しむとするか。

実は私、大学生になってから一度も牛丼屋さんへ行った経験がない。牛丼屋はおろか、マクドナルドやモスバーガーも食べたことがない。それもこれも、全てはマラソン記録向上のため。身体に悪いと分かり切っている食べ物を摂るならサバ缶やイワシ缶を食べる。飛行機に乗っている間、急に牛丼屋の牛丼が食べたくなった。一体どんな味がするのだろう?全てが終わって何を食べても良くなった今、悪魔の食べ物をバクバク食べてファストフードを体感したくなった。

お腹ペコペコで到着ロビー正面の吉野家へ。入ろうとした所、店長さんからラストオーダーを終えた旨を知らされ、「そうですか…」と絶望の面持ちで引き下がる。今日はまだ、answer600とジェル一本とおにぎりしか食べていない。2,500kcal近く消費し、摂取したのはわずか700kcal。お腹が空いて力が出ない。隣のローソンに入って食べ物を物色。鉄の意志でもって引き返してJR駅へ。今日は絶対に牛丼を食べる。コンビニ飯で済ませてはならぬ。

グーグー鳴り続けるお腹をさすり、時には叩いて宥める。JRと地下鉄を乗り継いで何とか帰ってきた。吉野家の代わりに松屋へ入店。念願の初牛丼を前に、券売機のボタンを押す手がブルブルと震えている。ここは無難に普通の牛丼か?いや、キムチマヨ牛丼も美味しそうだぞ。チーズ好きにはチーズ牛丼も魅力的。いや、ダメだ!店員から「アイツはチー牛だ笑」と思われてしまう。マラソンのダメージを鑑み、あっさりと食べられそうな大根おろし牛丼 (大盛) を注文。どのようなものが出てくるのか楽しみだ。

立ち昇る湯気の向こうに、波打つように重なる牛肉と玉ねぎのグラデーション。その上で舞う青ねぎは、春の若葉のように瑞々しく。絹のような薄切り肉と玉ねぎは、甘辛いタレの温もりに抱かれている。玉ねぎは半透明の宝石のように、その芯まで旨味を纏って。一口で広がる牛肉の味わいは、舌の上でほどける清水のよう。タレは甘みと塩味の黄金比で、白米という真っ白なキャンバスに味わいの絵を描く。肉の旨味と玉ねぎの甘美さが、静かな調べを奏でる。大根おろしは、この深い味わいに清涼という休符を打つ。添えられた味噌汁は、豆腐と油揚げの奏でる優しい余韻。温かな汁が、この一杯を心に染み入る体験へと昇華させる…

こんなに旨いものを家のすぐ近くで食べられたのに、自分は八年間も食べずにきたのか。バカだなぁ。我慢せず食べれば良かったのに。サバ缶の数兆倍はおいしい。本当に中毒性のある味だ。またいつか食べに行きたい。北大を離れるまでにもう一度行こう。

家に帰ってお湯をなみなみとはる。入浴剤も入れる。今日は別府温泉のもの。湯船に入って体をもみほぐす。満腹になったお腹をさすりながら来シーズンの展望を膨らませた。来シーズンは別府大分毎日マラソンへ出る。サブ40はもちろん、あわよくばサブ35したい。いずれは福岡国際マラソンに出てみたい。競技レベルが上がるにつれて練習の過酷さも上がっていくだろうけれども、自分の限界に直面するまではひたすら上を目指して見て頑張っていこうと思う。

~完~

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