私は札幌に住む現役理系大学院生である。
修士課程に入学してから博士進学と就職を絶えず天秤にかけていたが、ここでついに博士課程へ進学する決意を固めるに至った。
一度は社会人博士という道を考えてみたし、博士進学を躊躇わせている問題の根本的な解決には未だに至っていないのも現状である。
博士進学しない理由など山ほど見つけられるけれども、論理が(行きたいっ!)という感情を抑えられるわけがなく、結局は進学という道を選ぶことにした。
これからの3記事では、昨年11月に書いたもののTake2として、私が博士課程へ進学する3つの理由をつらつらと書き連ねていこうと思う。
博士になる思いの丈を文章で最大限表現してみたので、博士課程進学を迷っている人、ならびに私のブログのファンの方はぜひ最後までご覧頂きたいと思っている。
それではさっそく始めよう。
Contents
研究者を目指すに至る原体験
化学が大好きだった中学時代



私は中学時代から化学に興味を持っていた。
授業中の雑談にて“あらゆる化学的現象を式で表せる”と知り、
- えっ、すごい!
- 化学ってなんて美しいんだ…
と心底感動したのである。
物理に関しても化学と同様、大いに知的好奇心が刺激された。
ただ、力学や波動学を何となく無機質に感じてしまい、化学ほど大きな知る喜びを得られなかったというわけである。
高校に上がると授業が本格化し、ますます化学の魅力に憑りつかれていった。
大抵の授業は面白くなくて宿題を済ます時間に充てていたが、化学の授業だけは興味を持てたので、教師の話を聴きながら教科書の記載事項を隅から隅まで暗記していった。
化学を使って世に貢献したいと思い、高校三年次、京都大学農学部を受験した。
残念ながら不合格となり、一浪の末、北海道大学総合理系に合格したが、2年間の受験勉強の際も化学が私の息抜きとなり、”化学の新研究”という分厚い参考書をボロボロになるまで読み込んでいた。
電池に強く関心を持った大学時代



北大での最初の一年間、私はたくさんの講義を受講した。
とはいえ、正式に履修したのは2科目 (化学I, 化学II)であり、あとは興味のある講義の部屋の後列に座り、自分が化学のどの分野を極めていくべきか適性を見定める時間とした。
たくさんの講義に潜った結果、電池の材料研究に興味があることが明らかになった。
というのも、電池は電極同士の組み合わせや電解液との相性などを統合的に調整していかなくてはならず、世間で当たり前に使用されている電池は絶妙に調和がとれたいわば「芸術作品」であり、職人気質な私はそのような”作品”作りに向いているのではないかと思ったからである。
蓄電池にも燃料電池にも興味を持ち、そのどちらの研究もできる研究室を探してみた。
そして1年次の3月、進路振り分けの際、その研究室へ行ける学部・学科に進学した。
希望の研究室へ行くため学部の勉強を必死に頑張り、好成績を獲得した結果、3年次の3月に無事、第一志望の研究室へ配属されるに至った。
本当は燃料電池の研究に携わりたかったので、第二希望の蓄電池に関するテーマで頑張っていくこととなり少々気落ちしたが、(コレが自分の運命なのだ)と覚悟を決め、自分の選んだ道を正解にすべく毎日研究活動に勤しんでいる。
博士課程に進む理由その1:電池についてもっと研究したいから



私が博士課程へ進む一つ目の理由は、大学で出会った芸術作品・電池についてもっと研究したいからである。
市販の電池参考書の内容を全て掌握するのはもちろんのこと、自分の手で教科書の続きを書き足したいという願望がある。
研究室でたくさん実験し、自分で新たな知見を編み出す喜びの味をたくさん噛みしめることとなった。
過去の知見を学ぶ大学受験までの勉強もそれなりに楽しく感じられたが、自分にとって知識の創造は別次元の喜びを感じられるため、(この楽しい時間をもっと長く過ごしたい)と思い、博士課程への進学を決意するに至ったのである。
当然ながら、企業へ研究職として入社しても似たような思いを味わえるだろう。
ただ、就活してみて企業より大学の方が研究に対する自由度が圧倒的に高いことを身をもって感じたし、そもそも自分ではなく会社のために頑張れるか正直微妙な所ではあるので、博士課程で研究を最大限楽しみ、それからの進路はD3になって考えることにした。
B4, M1, M2と電池を3年間研究したが、研究すればするほど分からないことが増え、奥深さの片鱗にすら触れられないでいる現状。
博士課程入学後は今まで以上に狂人となり、博士号取得時に今より少しでも電池学の面白さ・深さに気付ければと思う。
自分が世界一詳しい分野を己の手で開拓し、その自信を今後の人生の糧としたい



博士課程での目標のひとつは世界一になることである。
たとえどれだけニッチでも、「自分が世界一詳しいんだぞ!」と胸を張って言える分野を己の手で開拓する。
私は中学時代に馬術競技で国体優勝を経験したものの、そこからジュニアオリンピック→ワールドカップ→オリンピックとステップアップできなかった。
たった一度しか日本一になれず、世界にはかすりもしなかったため、活躍の場を研究に移し、馬術で叶えられなかった世界一への思いをココで昇華させておきたいのである。
たとえ瞬間的にでも世界一を経験すれば、間違いなく自信になると確信する。
私は馬術にせよ大学受験にせよトコトン中途半端で終わってしまった人間のため、このタイミングをラストチャンスとし、世界一になった自信でもって己の生き方を変えてみせる。
私は東大はおろか、京大にすら受からなかった、地頭ゼロのアホ学生である。
そんなアホでも覚悟を決めれば世界一になれると、この3年間の博士生活で身をもって証明するつもりだ。
自分の基礎研究で日本の電池産業に微力ながら貢献させていただく



私が博士課程で行うのは次世代蓄電池の基礎研究である。
この研究が電池業界の役に立つかは正直良く分からない上、日の目を浴びるタイミングがいつになるかも全く見通しを立てられない。
もしかしたらそれは20年後かもしれないし、ひょっとしたら私の死後かもしれない。
明確に実用化の目途を立てられる応用研究とは対照的に、未来へ産業のタネを蒔く基礎研究は地味で華のない所業なのだ…
日本では”役に立つ”を追い求めるがあまり、基礎研究がなおざりにされがちである。
この傾向が続けば日本がどんどん衰退するため、私が人柱として博士課程在学中に必死で研究することにより、微力ながら次世代電池の土台形成に貢献したい。
強固な基礎がなければその上に応用を積み立てることは全くもって不可能だし、電池産業までChinaやAmericaに先を越されてはいよいよ日本が危なくなる。
私は日本が大好きなので、日本の電池産業を少しでも助けるため、我が国の俊英たちが少しでも早く次世代蓄電池開発しやすくなるよう、これからの3年間は死に物狂いで研究に打ち込み次世代にバトンタッチしたいと思う。
最後に
私が博士課程へ進学する一つ目の理由は、電池についてもっと知りたいからである。
二つ目の理由は長期留学に挑戦したいからなのだが、それについては次の記事にて書いていこうと思っている。
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