【研究室生活】インパクトファクター42の学術雑誌に論文を投稿した一部始終 (後編)

先日の記事で、IF42の学術雑誌に論文を投稿し、論文が査読に回ったところまでのアレコレについて書いてきた⇩

【研究室生活】インパクトファクター42の学術雑誌に論文を投稿した一部始終 (前編)

2022-06-15

この記事ではその続編として、査読アクセプトをめぐる攻防について話していこうと思っている。

 

それではさっそく始めよう。

M1の3月中旬:一回目の査読結果。もしかしてコレAcceptされるんじゃないの…?!

1月初旬に論文を投稿し、それから約40日後の3/12(土)に一度目の査読結果を受け取った。

当時の私は博士進学を決めあぐねており、博士進学と就職を天秤に載せて比較するため就活に邁進していた所であった。

査読結果を受け取ったのは、関西にある企業の最終面接へ行くため札幌駅から新千歳空港に向かっている列車でのこと。

おそるおそるメールを開き、英文を読み進めていくと、Reject!…ではなくきちんと査読してもらえているような文面であった。

一度目の査読は3人のReviewerによって行われたようだ。

その概要としては、

  • 修正期間は3週間
  • 3人中2人がminor revision (少しだけ修正すればAcceptしちゃるよ♪)
  • 残りの1人が少々多めに質問を投げつけてきたもののAccept前提の好意的な査読内容

このような形の査読であった。

指導教員のM先生も外部の研究機構でお世話になっている先生も「コレAcceptされるやつやん笑」と大喜びのご様子であった。

もちろん私も大喜びだったが、今は論文よりも企業の最終面接のことで手一杯だったので、まずは最終面接で内定を勝ち取り、そののち査読対応に全力を尽くすこととなった。

ちなみに、最終面接ではその場で内々定を頂いた。「博士進学するかもしれませんが…?」と述べた所、「博士課程を修了するまで入社を待ちますよ」とまで言って頂いた。

【就活】最終面接ハイライト・前編

2022-03-14

 

最終面接から帰ってきて、それから3日後に学会発表(オンライン)を行った。

論文に載せた研究成果をもとに発表を行ったのでかなり突っ込んだ質問にも対応することができ、幸運にも優秀学生講演賞を受賞できた。

そこからは怒涛の追い込みで査読の対応を行った。

春休みなので本当は青春18きっぷで日本縦断をやりたかったし、研究から離れて1週間ぐらい沖縄でボーっとリラックスしたかったのだが、もしこの論文がAcceptされたら電池業界の若きスーパースターになれるため、

  • (未来への先行投資だ…!)
  • (スターになれば後でナンボでも遊べるじゃないか…!)

と割り切り、春休みを査読に全betした。

私の査読対応の文章を校正にかけ、査読返信期限1日前の4/1に雑誌会社へ送った。

Reviewerの要求が高すぎてちょっと何を言っているか分からない文章も多々あったものの、周囲の人間やGoogle様のおかげでどうにか難局を突破できた。

 

M2の5月初旬:Accept…!!かと思いきや、2回目の査読に回されたとの連絡を受けた

我が指導教員の経験則では、一般的な雑誌の場合、雑誌会社から「3週間程度で査読対応してください」と言われたらほぼほぼAcceptされるらしい。

もし雑誌側にAcceptの可否を迷われているならもっと長めの対応期間を与えられるし、”3週間”というのは雑誌側の(早くこの研究成果を世に打ち出したいっ!)という気持ちが前面に顕れている証とのことだった。

ソレを最初に聞いた時、私は(コレで自分はスターの仲間入りか…!)と勝利を確信してガッツポーズした。

ReviewerたちもAccept前提で好意的なReviewをしてくれた(表紙に関するアドバイスまでしてくれた!)から、査読に返信してから2~3週間後にはAcceptの返事が来るものだと当然のように思っていた。

しかし…待てども待てども返事が来ない

4月末になっても返事が来ず、(いったい何があったのだろうか…?)と少しずつ不安になっていった。

私の通う大学の場合、学振DC1の申請書提出期限が5/16となっていた。

このままだと提出期限までに論文がAcceptされず、申請書の研究実績欄にも”投稿中”としか書けないので、

  • 早くAcceptされてくれよ!
  • 一体全体どうなっているんだよぅ!

と楽勝ムードがみるみるうちに崩れ去っていった。

 

DC1申請書提出期限の1週間前、論文が2回目の査読に回ったとの連絡があった。

4月初旬から5月中旬までの40日間に何があったのかは分からないが、私の論文のAcceptの前にもうひと悶着あることだけは確実であった。

まぁ、最高峰の雑誌だから、Reviewerと何度もラリーを交わすのは当たり前のことなのである。

できればもう少し早めに連絡して欲しかったなぁとは思ったものの、このステージでAcceptを賭けて戦えていること自体が奇跡なのだから、気長に査読結果を待ち、Acceptを願ってパワースポットの動画を大量に閲覧しておいた。

この論文のAcceptを願い、M1の11月には鹿島神宮香取神宮にお参りに行った。

それに加え、同年12月には伊勢神宮へ行き世界平和まで願ったぐらいだから、神様や運気を味方につけた私が負けるなどとは全く考えてもいなかった。

 

M2の5月27日:2か月待った挙句、まさかのReject。雑誌側から姉妹紙への掲載を提案されるも…

当日はあいにくの大雨だった。

Rejectという厳しい現実を突きつけられ、スーパースターになる夢はあえなく水泡に帰してしまった。

査読の結果を見てみると、最初の3名のReviewerのうち、2名は「もうこれでOKよ」と言ってくれているようであった。

残り1名の査読者が追加で3点ほど質問してきたものの、彼ら/彼女ら3人のReviewerは最後までAcceptする前提で査読を行ってくれたようだった。

問題なのは、追加された2名のReviewerである。

そのうち1名は「めっちゃ面白い論文じゃん!Acceptでいいよ♪」と、一切修正なしでの掲載を提言してくれた。

しかし、ラスト1名(Reviewer#5)が「この成果はすでに科学コミュニティーで知られていることだから新しくないよね、ハイReject」と判断し、コレが私の論文がRejectされる決定打となった模様である。

私自身、この論文を書くにあたり新規性について十分検討してきたつもりだったので、(本当にReviewer#5の言っていることは正しいのだろうか?)と、私の論文の成果が他に出された例がないか再度入念にチェックしてみた。

Google ScholarやWeb of Scienceでよく確認してみたが、私の研究成果と同じものを発表している研究例を一例も見つけることができなかった。

どう考えても私の研究成果は世界初の知見だから、私はこの査読結果に大いに不満を抱いていた。

それに、Reviewer#5のコメントを見てみると、私の論文を最後まで読んでいないことが丸分かりの文章だった。

  • 〇〇という記号の意味は何ですか?⇚いやソレ本文中にハッキリ書いてますやん笑
  • どうして△△という実験を行ったのですか?⇚それも本文中に書いてますやん…苦笑

など、まるで素人みたいなコメントで私の論文が評価されていた。

 

一番悔しかったのは、雑誌会社側が我々の研究グループに反論の機会を与えてくれなかった点である。

Reviewer#5のコメントには十分言い返せる余地があったのに、雑誌会社側の判断でRejectされてしまい、イライラを虚空にぶつけるしかなかったのである。

そんな中、雑誌会社側は「その雑誌の姉妹紙に論文を投稿しないか?」と誘ってきた。

今回投稿したのはIF42の雑誌だが、その雑誌会社によるちょっと格下の雑誌ならこのままの形で載せてあげるよと言ってきた。

新しく提案されたその雑誌はOpen Accessを売りにしていて、Nature Communication(Natureの姉妹紙, 2022年6月現在IF≈15)やScience Advances(Scienceの姉妹紙, 2022年6月現在IF≈14)と対抗していくつもりらしい。

しかも掲載料無料のオプションまでつけられたから、一瞬だけかなり魅力的な誘いに映って見えた。

しかし、

  1. Rejectされた理由に納得がいかないのにその雑誌会社の系列へ論文を載せるのが嫌だったこと
  2. 新しく提案されたのがまだIFがついていないほど歴史の浅い雑誌だったこと
  3. (自分たちの知見の価値はこんなもんじゃない)と確信していたこと

この3点の理由から誘いを拒絶する決定を下した。

特に①の理由が決定的で、妥協してまでその雑誌系列の軍門に下るのは意地とプライドが許さなかった。

私がもしココで妥協したら、後輩がいずれビッグジャーナルへ論文を出す際、その時の苦労が段違いに多くなってしまう。私はどうせ早死にするので後輩には私の分まで幸福を享受してもらいたいし、最大限人の役に立ってから死界へと旅立つのが私の唯一の生き甲斐となっているのだ。

 

最後に&自分に研究者としての資質はあるのか?

いつまでもRejectのショックを引きずってもいられないので、指導教員や外部の研究機構の先生と次に論文を出す所を相談した。

その結果、次はエネルギー業界で最高峰となるIF38の某雑誌へ投稿することになった。

研究成果が果たしていつ世の中に出るのか、私は全く予想することができないでいる。

今年中にAcceptされ、修士課程におけるJASSO第一種奨学金返済免除の実績に使えたらいいなと思っているが、もしかしたらAcceptまで1年かかる可能性も考えられるため、あとは気長に待つしかないのであろう。

 

論文投稿までの一連のプロセスを経験し、自分には研究を一生やり続けられるほどのモチベーションはないとハッキリ自覚するに至った。

もちろん研究は好きなのだが、研究成果をまとめる”論文出版”というプロセスに耐えがたい苦痛を感じるのである。

HSPの私が論文を書くとき、以下のような感情に人一倍襲われてしまう。

  • ブログより厳密性を求められるが故に生じる緊張感疲労感
  • さんざん時間を費やした挙句Rejectされるかもしれない不安
  • 他の研究者にいつ先を越されるかわからない恐怖

研究者として研究を続ける=これらの感情とのせめぎあいを一生涯続けるのと同義だから、あまり精神が強くない私に研究者という職業はおそらく不向きなのだろうと考えている。

とはいえ、ここで研究の道を閉ざしてしまうのも少々口惜しく感じられる。

だから博士課程に進学し、自分を限界まで追い込んでみて、研究に対する適性を見定めてから将来進むべき道を決めるつもりである。

 

以上です。

かめ
上記の論文がAcceptされ次第、ブログでお知らせしようと思います。半年後になるか一年後になるか分かりませんが、電池業界や後輩の未来のため、少しでも研究成果を早く世に広めたいと願っています。

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