私は札幌に住む現役理系大学院生である。
博士課程進学を決意し、いつから博士へ行こうかと考えている所である。
この記事では、修士課程を半年、もしくは一年早期修了して博士課程へ進学するメリットとデメリットについて考察してみた。
博士課程や早期修了に興味のある方の参考になる内容だと思うので、是非最後までご覧頂きたいと思っている。
それでは早速始めよう。
Contents
大学院修士課程を早期修了するメリットとデメリット
メリット:4つ
修士課程の早期修了に対し、私が見出したのは以下の4つのメリットである。
- 奨学金返済免除や学振DC申請時の実績に使える
- 大学受験浪人による1年間の遅れを巻き返せる
- 履歴書上、興味深い経歴が作れる
- 卒業までに要する学費を節約できる
以下で一つずつ詳述していく。
奨学金返済免除や学振DC申請時の実績に使える



私はいまJASSOの第一種奨学金(無利子)を借りており、返済免除を目指して日々実験に励んでいる。
返済免除となるには授業の成績や論文投稿など様々な評価基準でポイントを積み上げる必要があるのだが、本記事で述べる修士課程の早期修了も返済免除の判断対象として加味されるのだ。
さらに、修士の早期修了=博士進学を意味するため、博士進学ポイントまで加算されていく。
博士進学者には論文投稿や学会での受賞よりも高いポイントが付与されるため、まさに一石二鳥を狙えるという訳である。
また、修士の早期修了は学振DCの申請時に己の実績としてアピールできるらしい。
私の場合、修士課程1.5年での早期修了を検討しているため、仮にDC1の申請に落ちた場合、DC2の申請時に早期修了の実績が使えるだろう。
学振の審査員は膨大な申請書を読むだろうから、実績欄にパッと目を引く経歴が書いてあれば(何やおもろい奴がおるなぁ…)と自身の研究に興味を示してくれるキッカケになるかもしれない。
DC1で採用してもらえるのが一番であるものの、もし不採択だった場合の事も考えておかねばならないため、少しでも実績を上積みしておけば将来の見通しが少し明るくなると思うのだ。
大学受験浪人の一年間を取り戻せる



私は一年間の受験浪人を経て大学に入った。
自分の身の丈に合わない大学を志望したため浪人という悲劇が発生し、空白の一年間を挽回する方法はもうないのだと諦めていた。
ところが、修士を早期修了し、さらに博士も早期修了すれば、一年などあっという間に巻き返すことができる。
ウチの大学院の制度上、修士は1年・博士は2年で卒業できるため、本当に何もかも歯車がかみ合えば僅か3年でドクターを取得する事が可能なのだ。
もし私が3年で博士号を取得できたら、大学を現役合格し、修士&博士を5年間かけて卒業した場合よりも早く大学院生活を駆け抜けることができる。
私にとって修士早期修了は、浪人によって植え付けられた劣等感を払拭できる最高にして最後のチャンスなのである。
私の周りの大人たちは「若い時の一年なんて年取ってみれば誤差みたいなもんよ」と仰るものの、一年遅れた当事者の私からすれば, 若い時の一年を失った事で精神に深い傷を負っている。
- 高校の同級生が仲間とワイワイ遊んでいた時に私は予備校でストレスに耐えて勉強していたし
- 同級生が部活やサークルの連中と旅行に行って感受性を磨いていた時に私はひとりボロボロになりながら公園の滑り台の上で泣いていたし
あの一年間があれば人生もっと楽しかったのに…と思った回数は千手観音のお手を拝借しても数えきれないほどである。
ここでギアを上げて研究に打ち込めば、一年間の遅れを取り戻せる。
それだけでも十分、博士課程へ進学するモチベーションになってくれる。
興味深い経歴が作れる



修士課程を早期修了した場合、履歴書上は修士を退学して博士へ入学した事になる。
つまり、博士課程在学中はただの学部卒と同様であり、博士号を付与されて初めて学部卒からランクアップできるという訳である。
博士を早期修了した例はよく耳にするが、修士を早期修了した例はあまり聞かない。
極めて希少な経歴を手に入れられるという点で、”人と違う事”を何よりも好む私は修士早期修了に魅力を感じた。
学費の節約になる



最後に、在学期間が短いため、支払うべき学費の総額も抑えられる。
国立大の学費は半期26.5万円ほどであり、大学院を一年間早く出れば53万、2年早期修了すれば100万円以上もの支出を抑えられる。
修士課程在学中のいまは親から学費を払ってもらっているが、博士に進学したら学費は自分で支払うつもりである。
奨学金から出すにしろ学振DCから捻出するにしろ、学費の支出は少なければ少ないほどQOLが上がるはずなので、早期修了によって学費の節約になる点に私はかなりの魅力を感じたのであった。
デメリット:3つ
私が思う早期修了のメリットを4つご紹介した。
一方で、現時点で考えられるデメリットは以下の3点である。
- 奨学金が満期分返済免除とはならない
- もし博士をドロップアウトしたら学部卒としてやっていかねばならない
- 修士&博士を5年やるより研究内容や知識の厚みに劣る
以下で一つずつ詳述していく。
修士課程の奨学金が返済免除になっても、2年分ではなく1年分(1.5年分)しか免除にならない



仮に私が修士課程を一年半で早期修了したとしよう。
そして、運よく返済全額免除(2年間で約200万円)を勝ち取れたとしよう。
この場合、私がタダでゲットできる金額は果たしていくらだろうか?
200万円…?否、正解は150万円なのである。
JASSOの第一種奨学金の場合、返済免除となるのは在籍している期間だけなのである。
だから修士課程に一年半しかいなければ200万×3/4=150万円しか免除にならないし、一年しか在籍していなければ最大でも200万×1/2=100万円しか免除にならない。
まぁ、博士課程に入ってもJASSOの奨学金は借りられるし、業績に応じた返済免除制度も設けられてはいるのだが、修士課程における頑張りを満期分認めてもらえない点は少々残念だなぁと感じている。
奨学金返済免除額が目減りしてしまう、コレが早期修了の第一のデメリットである。
仮に博士課程を中退した場合、学部卒として社会に出なくてはならない



私がもし何かの間違いで精神に支障をきたし、これ以上研究が続けられなくなってドロップアウトしたとしよう。
その時、私の手元には何が残るだろうか?
一生懸命実験して得た大量のデータ、四苦八苦してプレゼン作成する過程で培った資料作成能力など、多くの貴重な無形資産が残るはずだ。
しかし、肝心の学位に関しては…博士号はおろか、修士号すら手元にない状態で社会に出ることになるのである。
先ほど、「修士も博士も早期修了すれば浪人の一年間を巻き返せるっ!」と嬉しげに記載した。
しかし、それと同時に、もしドロップアウトすれば全てが終わる、ハイリスクハイリターンの賭けなのである。
修士課程を退学しているため手元に修士号はない状態、博士号を取得できなければお金も時間も水泡と化してしまう。
私に大勝負に打って出る覚悟があるか、博士課程を卒業できる見込みはあるのか…早期修了する前によくよく考えておく必要がある。
一番安全なのが、修士・博士を2年ずつ、計4年で卒業するという計画である。
ただコレにも問題があって、D2で就活に臨むため、企業側が(この人は本当に今年卒業するだろうか…?)と採用を思いとどまるおそれがある。
修士1.5年&博士2.5年のプランなら、就活にD3として臨めるため企業側に安心して採用して頂く事ができる。
どちらのプランも一長一短…私の意志はまだ固まりそうにない。
修士&博士を5年やった”想像上の私”より研究内容や知識の厚みに劣ってしまう



学部時代と比較し、私は(うぬぼれている訳じゃないが)成長したなぁと感じている。
発表時の受け答え然り、実験の熟練度然り、一年前の自分とは比べ物にならないほど実力がついたと自己評価している。
おそらく、来年の自分は今よりもっと成熟していると考えられる。
その来年の自分はもっと進んでいて、その来年の自分は過去の自分を更に上回っていて…このように、人間は一般的に年月を経るにつれて逆マトリョーシカ人形の要領で大きく・たくましくなっていくのである。
つまり、もし修士&博士を4年で出れば、大学院を5年かけて修了した想像上の私よりも成熟度で劣っていると考えられる。
4年間死に物狂いで頑張ったとしても、5年間死に物狂いで頑張ったのに比べれば投資した時間に20%もの差が付いているのだ。
比較対象は他人ではない。同じ研究をしている訳じゃないのだから、同一の評価基準で他人と比べるのは全くもって意味をなさない。
一年間早期修了した事で得られなかった成長機会を己が許容できるかどうか…それが一番大事だと思う。
最後に
私が修士課程の早期修了に関して抱くメリットとデメリットは以上である。
頭の中のアイディアを言語化してみて、そもそも早期修了すべきなのかどうかから考えてみるべきだと感じた。
修士号を取得せずに博士に行くのは背水の陣のようなものである。
後悔のないようもう一度熟慮し、早期修了すると決めたら早めに手を打っておきたい。
以上です。
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