大学受験の勉強って何の役に立つの?化学系大学院生になって分かった事

私は札幌の現役理系大学院生である。

4年前の入試で大学に入学し、現在は大学院修士課程の学生として研究生活を営んでいる。

この記事では、大学入試の際に必死にやった勉強がいまどのように役立っているのかについて書いていく。

  • (こんな勉強、何の役に立つんだよ…)と絶望している現役受験生
  • (一生懸命頑張って合格したけど、アレは何の役に立つのだろう?)とふと思った大学1,2年生

こうした方々にピッタリな記事だと思うので、是非最後までご覧頂きたいと思っている。

 

それでは早速始めよう。

英語:論文調査&執筆、外国人とのコミュニケーション

まずは英語。

英語が研究生活で役立った場面は以下の3つである。

  1. 自分がやろうとしている研究と似たような例が無いか、研究を始める前に事前調査する時
  2. 実験成果を世界に向けて発信するべく英語論文を作成する時
  3. 留学生や外国人研究員とコミュニケーションをとる時(メールでも口頭でも)

 

世界は広いので、自分が思いついた発想が海外でとっくに検証済みとなっている場合がある。

既に調べられている事を再度実験してもあまり意味がないので、研究開始前に先行研究がないかどうかよくよく調べておくのだが、学術論文は主に英語で書かれているため、大学受験で培った英語読解力を駆使して研究例をリサーチするのである。

そして、自分が論文を発信する側になれば、大学受験で培った英作文力がモノを言う。

最近はGoogle翻訳を始めとする翻訳サイトがどんどん進化しているため、AIの力である程度正確な文章が仕上がるものの、AIだって完璧ではないから時々変な文章を作成したり論文にそぐわない単語を使用したりする時があるから、翻訳サイトが作成してくれた英文を読んで(ん?ココは何かおかしいぞ…?)と違和感を感じられるぐらいの英語力は必要となる。

また、外国人とやり取りする時にはほぼ間違いなく英語を使う。

メールでのやりとりは翻訳サイトを使えばどうにか乗り越えられる一方、外人と会話するとなると受験ではあまり重要視されなかったアウトプット力が求められるから、受験が終わってからも英語の勉強は継続的に行うべきだし、大学生になったら瞬間英作文などで簡単な英文を瞬時に作成するトレーニングをやると良いだろう。

 

理系だからといって、英語から逃れられるわけじゃない。

たとえ大学受験は他の強化でカバーできても、研究室生活が始まれば英語を最低限使いこなせないと全く研究が進まないのである。

大学受験では英語”を”学ぶが、大学に入れば英語”で”学ぶ事が要求される。

英語を使いこなせると日本語で得られる数十倍の情報を手に入れられるので、英語が苦手な受験生には今のうちに英語嫌いを克服しておいていただきたいと思う。

【さすがに無理だ】英検一級取得を諦めた5つの理由

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数学:論理的思考力&データを読み取る力

次に数学。

私は化学系の大学院生であるため研究生活においてあまり数学を使わないのだが、よくよく考えてみると

  1. 仮説を破綻なく構築する時
  2. 実験データを読み取る時

こうした時に役立っているなぁと感じられる。

整数分野でゴリゴリやった論証問題では論理の飛躍や破綻なく説明する力を養えたし、そこで培った能力は実験方針を決めるのに重要となる仮説構築の際に大いに役立っている。

また、センター対策の際にやった統計分野の勉強で得たデータ分析・整理の力は、色々とパラメーターを振って得られたデータにはどのような傾向(正/負の相関)があるのかを読み取る時に有用である。

 

大学では、生物は化学に、化学は物理に、物理は数学に、そして数学は哲学になる。

したがって、化学系だからといって物理を疎かにはできず、物理の基本言語は微分積分であるため結局は数学の力も重要となる。

受験問題を解くのに役立つテクニックは大学ではあまり役立たない。

根本原理や公式をどこまで深く理解しているかが、大学の勉強についていけるかいけないかを分かつ分水嶺となるのである。

大学受験では解答時間に制限があるため多少テクニックを駆使して頂いても差し支えないが、テクニックを使えるだけで根本を理解していないと大学に入ってから本当に苦労する。

もし少しでも余裕があれば、公式の導出や基本事項の確認などを丁寧に理解し直しておくと大学に入ってからが楽である。

 

国語:論文読解&コミュニケーション

大学受験の国語は以下の場面で役になっている。

  1. 他人の論文を論旨に沿って読み解く時
  2. ゼミや指導教員との打ち合わせにおいて自分の主張をなるべく分かりやすく正確に伝えたい時
  3. 科学論文を執筆する時

 

私は趣味で論文を読み、専門分野以外の論文にも手を出す時がある。

自分があまり詳しくない領域の論文であってもディスコースマーカー(Therefore, However, etc.)や論旨をきちんと押さえておけば多少は論文の内容が頭に入ってくるモノであり、馴染みのない文章をどうにか読み解く力は大学受験の国語の勉強で養えたのではないかなぁと思っている。

そして、自分の考えを相手に伝える際に国語力はモロに効いてくる。

国語が不自由な人の話は聞いていても訳が分からないし、聞き手にも話し手にもストレスがたまって(早くしゃべり終われよ…)とウンザリして(させて)しまう場合が多々あるため、大学受験以降も国語力を鍛え続ける重要性をひしひしと感じている次第である。

最後に、自分の研究成果を論文化する際にも国語は非常に重要である。

いくら英語で発信するとは言ってもまずは母語の日本語で論文を組み立てるため、前後の繋がりの良い文章をテキパキ作成するには国語力が高いに越したことはないのである。

 

残念ながら、私にはまだ古文や漢文の有用性を感じた経験がない。

趣味レベルでは孔子や老子の素読をやったり源氏物語の現代語訳を通読したりしているものの、「じゃあそれがどう役に立っているの?」と問われると何も言い返せない。

もう少し極めたら何か見えてくるものがあるのかもしれない。

Appleを創ったスティーブ・ジョブズだって禅の精神から多くを学び取ったらしいし、きっと世の中に無駄なモノなんて一つもないのだろう(知らんけど)。

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物理:研究の幅を広げてくれる重要なツール

前述したように、私は化学系の大学院生である。

化学系の中でも電池やメッキを扱う電気化学という分野を専攻しており、高校理科の区分でいえば専門対象は明らかに化学寄りである。

しかし、そんな私でさえも、高校時代に物理を勉強しておいて良かったなぁと思っている。

なぜならば、化学を駆使した研究で行き詰った時にはその局面を物理で打開できるかもしれないし、物理の世界であまり分かっていない事を化学の力で解決できるかもしれないからだ。

 

幸運にも、私は物理と化学を両方使える研究テーマを指導教員から与えられた。

  • 物理の要素としては光の干渉があり、
  • 化学(こっちがメイン)の要素としては電池反応がある。

水などの液体中で電気化学反応を起こすと、電極では酸化/還元反応が発生し、電極付近のイオン濃度に変化が生じる。

そして、干渉計という装置を使い、電極近付近のイオン濃度がどのように変化しているのかを調査する事によって、電池の更なる高性能化に貢献しようとしているのだ。

 

私にとって物理とは、研究の幅を広げてくれる頼もしい相棒である。

昔から物理が好きだったので、好きな物理がこのような形で研究に役立ってくれて本当に嬉しく思っている。

電気化学に物理のエッセンスを一滴加えるだけで、世界で一つだけの研究がすぐさま誕生するのである。

化学・生物系に進むからといって物理を避けるのは勿体ないし、化学と生物を選択している受験生も物理の教科書を読んでおくだけで見える世界がだいぶ違ってくると思う。

 

化学:高校化学は議論の大前提

私が所属する研究室の場合、高校化学(とりわけ理論化学)は皆が知っている前提で議論が進められる。

  • 陽極と陰極でどんな反応が起こるかは暗黙の了解のもと話が進むし
  • 熱化学や反応速度についても知らなかったら恥ずかしいレベルだし

有用性を感じる以前に(知らなかったらヤバイ)という危機感を覚えるほどである。

私の学科は私の所属する研究室における研究生活で役立つ知識を得られないカリキュラムであり、研究室に入ってから多くの知識を吸収したのだが、その下地となったのは間違いなく高校化学であるし、もし履修していなかったなら随分と苦労したのではないだろうか。

化学系研究室では化学を道具として日々使い倒すため、化学系専攻の方は研究室配属以後、専門分野や研究テーマに合わせて更に色々と学ぶ事になるだろう。

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ちなみに、大学の教養課程で習う化学は物理化学と呼ばれる学問である。

シュレーディンガー方程式や電子状態など、まるで物理をやっているような感覚に陥る授業だ。

まるで物理のような化学の講義を受けた結果、高校まで化学を面白いと思っていた学生の多くが化学を嫌いになってしまう。

でも安心して欲しい、私もイマイチ物理化学を理解できていないが化学系大学院生をやれているので、高校生の時に化学実験を少しでも面白いと思った方は躊躇なく化学を専攻して頂いて構わない。

どの専攻でも同じだが、専門分野に全く興味が持てないと非常に辛い研究生活となってしまう。

だから、世間体とか見栄とかではなく、自分の興味と好き嫌いで学部・学科選びをしてもらいたい。

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社会:???

最後に社会科について述べる。

私はセンター受験の際に日本史を選択したが、日本史が研究で役立ったなぁと思う場面はまだ経験していない。

ただ、理系学生として4年以上勉強していると(日本と圧倒的な国力差のあるアメリカに戦争を挑んでも勝てっこないよな)と本能的に分かるようになった。

また、私が仮にアインシュタインレベルの発明をした場合、広島や長崎への原爆投下といった悲劇を二度と起こさないよう科学技術の人道的な使用を常に呼び掛けていく必要があるし、そうしなくてはいけないよなといった科学的倫理観が養成されたと考えている。

 

歴史は必ず繰り返す。

二度あることは三度あり、奢れる者は久しからず。

世の激変期にどう立ち振る舞えばいいかは先人たちが教えてくれるので、歴史の学習は(すぐには役立たなくても)後々必ず役立ってくる。

国語と同じく、歴史に関しても極めれば研究に役立てられるかもしれないので、もう少し深く掘り下げて知識をどん欲に吸収していきたいと思っている。

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最後に

大学院生になって分かった大学受験の有用性については以上である。

受験勉強の最中には何のためにやるのか分からなくても、将来何かのタイミングで(あぁ、このためだったのか!)と分かる時が必ずやってくるのである。

”若い時の苦労は買ってでもせよ”との言い伝え通り、食わず嫌いせず様々な分野の勉強を試みてみるべきだ。

嫌いな教科でも好きになる場合が往々にしてあるため、”受験勉強”というまたとない好機を有効活用して未来の日本を支える人材になって頂きたいと思っている。

 

以上です。

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馬術競技からマラソンに転向した北大工学院のM1|国体馬術競技優勝&8回入賞|10000m36’33”|マラソン2°47’50”|100kmレース10°19’17”|英検準一級|TOEIC785点|ラン歴5年|乗馬歴10年|英語の学術論文2報(電気化学)|月間2万PVのブログ運営中|コメントやご相談はTwitterのDMまでお願いします。