先日、この記事の前編にあたる記事を投稿した。
本記事では、その後編として、ラボ生活を快適にするヒントの続きを伝授していく。
Contents
大学院試験:実験は二の次で、まず受かる事を優先して下さい!



大半の理系大学生はそのまま大学院に進学する。
大学のカリキュラム自体が大学院進学を前提に作られているし、大学院(ここでは修士課程)に進んだ方がより簡単に就職が決まるからである。
私自身(本当に大学院に進んでよいのか?!)などと考え込んだことはなく、(周りが行くなら私も行こう)ぐらいのノリで大学院に行くのを決断した記憶がある。
幸いなことに私は筆記試験を免除されたので、面接試験のみで大学院合格をもぎ取る事が出来たのだった。
筆記試験を受けていない私が言うのもアレなのだが、大学院試験に臨むのであれば実験は二の次で、まずはとにかく合格する事を優先してもらいたい。
というのも、大学院試験に落ちれば即・ニートであり、大学受験に落ちて浪人するより大変な日々が待っているからである。
いい年しているクセに社会的身分がなく、”自分は何者でもない”という事実は大学受験浪人よりもキツイものがある。
「大学院試験は簡単だww」と舐められがちだが、落ちるヤツは落ちるので、絶対に油断せず、試験終了まで一点をかき集める貪欲さを持って挑んで頂きたいと思っている。
「実験をやれ!」とやかましく言う先生方も、大学院試験の勉強のためなら勉強する事を許可してくれる。
なぜなら、その学生が落ちたら先生は手先を一つ失ってしまうし、自分が実績を積むためには一人でも多くの手先が必要なので、学生には絶対に合格してもらわなくては困るからである。
院試合格のために、あなた方の先輩は惜しみなくアドバイスをくれるだろう。
先輩の体験談は非常に貴重なので、その先輩との距離を縮める意味でも「どうやって勉強したんですか?」と話しかけてみると良いだろう。
実験:失敗して当たり前。やればやるだけうまくなります。



私の研究室では、大学院試験が終わってから本格的に実験が始まった。
院試前からゴリゴリ進めていた私のような人間は一握りで、大半の人間は
- 院試前は実験手順を習得して
- 院試後から卒論に使えそうなデータを集める
こうした形で作業を進めていたようだ。
そして、実験をやった経験のある人なら誰でも頷くと思うが、最初は全く上手く行かないのである。
実験セルの作り方が粗いため、出てくるデータもとんでもないものになってしまうのである。




















やったことがなかったのだから、最初は上手く行かなくて当然である。
何度も何度も実験を行い、失敗から色々と学び取ってちょっとずつ成長していけばいい。
やればやるだけ経験値がたまって上達するから焦る必要は全くない。
コツをつかめば苦戦していたのがウソのようにテキパキ作業できるようになるため、投げ出したいのをぐっとこらえて自分の上達を辛抱強く待つべきである。
もし3か月頑張っても上達する気配すらなかった場合、実験テーマを変えてみるのも一つの選択肢だ。
私は大変デリケートな装置を使った実験をしていたのだが、装置の繊細さと私の大雑把な性格が全くかみ合わず、3か月ひたすら試行錯誤しても何一つ上達しなかったため、「もう無理です」と先生に泣きついて実験テーマを変えてもらった経験がある。





と思うかもしれないが、先生としても、学生に気を病まれて大学を中退されるよりはマシなので、後は自分の心持次第である。
(どうしてもやって行けそうにない)と思った時は、”実験テーマは変えられる”という事を思い出してもらいたい。
ディスカッション(進捗報告):できれば毎週、先輩か先生とお話ししよう。



研究は一人でやるものではない。
どんなにすごい研究者でも必ず誰か他の人と話し合いながら研究を進めているし、話し合う回数が多ければ多いほど新しい発見も生まれてくるのである。
だから、我々学生も周囲の人間(先輩や指導教員)と積極的に議論すべきだ。
できれば毎週、最低でも月に2回ぐらいは自分の現状を誰かに報告しておくべきである。
進捗報告には新しいアイディアを生み出す他に、自分が変な方向に突っ走っていないかチェックするという目的もある。
自分の立てた仮説自体が根本原理(熱力学第一原則など)に反しているかもしれないし、そもそも上手く行くはずがないものに延々と労力をかけていると、時間の無駄な上に気を病んでしまう可能性がある。
頻繁にディスカッションを行う事で自分の実験がより円滑に進行していくし、”少なくとも間違ったことはしていない”という安心感の元で作業できるため漠然とした不安に悩まされずに済む。
あまり人と話すのが得意ではない人も、自身の研究のためにディスカッションだけは欠かさず行ってもらいたい。
ちなみに、私は人と話すのが非常に苦手であった。
小4~中2の間に太り気味の体型の事でいじめられて人間不信になったのが原因であり、人と話さない重度さは高校時代は一週間に数回しか人と話さなかったほどである。
しかし、自分の研究を成功させるためにディスカッションが不可欠だと知り、(こうなったらやるしかない)と腹をくくって人と話すようにしてみた。
すると、少しずつ人とリラックスして話せるようになり、B4の終わりには幼少期のように人と話すのが楽しく感じるまでに成長した。
ディスカッションを繰り返せば少しずつコミュ障を克服していける。
そのため、私のように人嫌いな人間も、どうか少しだけ我慢して人と話すことを心掛けてもらいたい。
卒論:書く順番が大切だよ。



私にとって、研究室生活初年度最後の壁は卒業論文の製作であった。
先輩たちの卒論には15,000字近く文字数があったし、簡潔で非常に論理的で分かりやすい文章が書かれていた。
そんなお手本のような文章を見た私は





とすごく不安だった。
文字数に対する心配はなかったのである。
しかし、私のやっているブログでは好き勝手書いて良いのに対し、論文では話を脱線させることなく一つの線に沿って客観的に淡々と述べ続けなければならないため、期日までに完成させて提出しているイメージが全く湧かなかったという訳である。
先輩にアドバイスを求めても「まぁ、何とかなるさ」としか答えてくれず、困り果てた私はネットで卒論の作り方を検索してみた。
色々とサイトを見ていくうちに、私は卒論製作には順番があるという事に気が付いた。
- まずは謝辞を書き(やっぱ感謝の気持ちは大事)
- 次に結論を書いて(到達点をはっきりさせる)
- 何が分かったのか・読み取れるのか(実験結果)を淡々と述べて
- その結果を得るためにどのような手法を用いたのか(実験方法)を記し
- 最後にその結果をどうして得なくてはならないのか(実験背景)を述べる
このように卒論を一つのストーリーとして見れば、作っている途中に(アレッ、何を作っているんだっけ…?)などと迷子にならずに済むと発見したのである。
私が卒論作りを難しく思っていたのは、最初に実験背景を作ろうとしていたからであった。
背景は実験結果や実験方法をまとめてからじゃないと作れないパートだから、そんな大変な章にいきなり挑戦しても上手く行くはずがなかったのである。
上で述べた5ステップに従って卒論を作ると、みるみるうちに卒論の骨格ができていった。
私の卒論は表紙と目次を抜いて59ページ&23,000字あり、それは5日間であれよあれよと完成した。
最後に
これから研究室に入る学生さんたちに伝えたいことは以上である。
研究室配属の前と後では環境が激変するため、今まで培ってきた生活リズムをなるべく崩さないよう気を付けて頂きたい。
一番大切なのは、トラブルを一人で抱え込まない事である。
何でも一人で解決しようとせず、周りの力を上手に借りて、卒論なり学術論文なり各々にとって最善な形で各々の努力を後世に残して頂きたい。