【北大応マテ】学部2年の授業内容をちょこっとだけ紹介します

私は北海道大学工学部・応用マテリアル工学コースの4年生である。

この記事では、応用マテリアル工学コース(略称・応マテ)で受けてきた全授業の内容と感想を少しずつ紹介していく。

  • 総合理系でどこの学部に行こうか迷っている人
  • 応マテに興味があるけど、応マテでは何をやっているのかイマイチイメージがつかない人
  • 材料系の勉強をしようと思って色々と情報を集めている高校生(浪人生)

こうした方々のために記事を作成した。

 

学科の大まかな情報はパンフレットや学科サイトに載っているが、その学科で受ける授業についての情報はほとんど出回っていない。

所属先を選ぶ学生としては授業内容もかなり重要なはずなのに、なぜか内容の紹介を省いているケースが大半なのだ。

授業を受けてみて、(アレ?思っていたのとなんか違う…)と絶望してしまう学生が応マテだけではなく毎年どこの学科にも現れてしまう。

この記事と出会った皆さんにはぜひとも内部生目線の情報に接してもらい、納得できる学部・学科選びをしてもらいたいなと思っている。

 

学部2年次

2年前期

材料熱力学:エントロピーとかエンタルピーとか…

1年生の物理で習うエントロピーやエンタルピーといった概念を金属材料の製造プロセスに適用できるようになるための講義である。

高校の化学(理論化学)では特に意識せずただ計算式を解いて解を導いていたかもしれない。

しかし、応マテでは(そもそも本当にこの反応は起こり得るのだろうか)というのを熱力学的観点から思考する所から始まるのだ。

その反応のギブスエネルギーは正なのか負なのか、FeOにどれだけの熱を加えたらFeになるか、G=H-TSってどういう意味を持つ式なのか…こういう事をひたすら考え、期末試験一発で熱力学の習熟度を測られるのが材料熱力学である。

 

私が応マテで初めて受けた授業がこの講義。

テストは一応全問解いたはずなのだが、テストの解答用紙に(先生の分かりやすい講義のおかげで熱力学をもっと勉強したくなりました!)と媚を売り、先生の機嫌を損ねたのが原因で、なぜか成績はB⁻であった。

大変遺憾である。

大学には媚を売られるのが好きな先生と嫌いな先生がいる。今授業を受けているのがそのどちらであるかを慎重に見極めることは大変重要な事である。

 

機械工学概論:応力、流体力学をサラッと学習

工学部には違う学科で学ぶ内容をサラっと学習する”概論”という授業が存在し、我々学生は複数の概論科目の受講が卒業要件になっている。

応マテの場合は

  1. 機械工学概論
  2. 環境工学概論
  3. 資源工学概論
  4. 情報エレクトロニクス概論
  5. 生体工学概論

この5科目から3科目履修する事が必要である。

私は情報系と生物系が嫌いだったのでその他の3科目を履修した。

生体工学概論はめちゃめちゃ楽だと友人から聞いたので、それを聞いた時は(しまった…)と落ち込むことになった。

 

機械工学概論は、名前の通り、機械工学についてサラっと学ぶ授業である。

応力とはなんぞや、飛行機の翼で空気はどんな感じで流れているのか、機械設計のおおまかなポイントなど、今振り返ってみても全く思い出せないほどサラっと機械工学の表面を触る講義。

機械系の教授が持ち回りで講義を行い、持ち込み可の期末試験一発で成績が付けられる。

私はこの講義を前方でかなり真面目に聞いていたはずなのに、期末試験の問題には全く歯が立たず、それなりに考えましたよ”という証を解答用紙いっぱいに死に物狂いで書きなぐって誠意を示し、そのおかげで命からがらB⁺を獲得した。

工学部では表向きは6割を切ったら単位をもらえない事になっているが、実際の所は、6割を遥かに下回っても救済措置で単位を獲得できるケースがほとんどである。次に紹介する応用数学では25点しか取れなかった学生でも単位をもらえたと聞くし、教授としても翌年またその学生の面倒を見るのが”面倒”なので、できるだけ単位を振りまきたいと考えているのである。

そうはいっても、救済措置をアテにするのは間違いである。基本的には6割を超えるために勉強すべきだし、単位取得を目標にするのではなく満点をとるのを目指すべきである。

 

応用数学:偏微分、フーリエ変換、複素関数などなど

工学部と言えば数学と物理を多く使うイメージがあるのではないだろうか?

私もそうだったし、私自身、数学と物理(化学も)が得意だったから、得意を活かすために総合理系で学部選びをする時は最初から工学部一択だったほどである。

ただ、ここが肝心な所だが、応マテでは数学をガリガリ使う場面がほとんどない

エントロピーを出す時の積分計算は手持ちの関数電卓で行うし、複雑な数式を解くケースよりは転位(結晶の欠陥みたいなもの)や電気二重層(電気化学反応で電極表面に形成される電子の層)といった概念を理解することに時間が割かれる傾向にある。

 

応用数学では、フーリエ変換や複素積分など、工学部で使う”とされている”数学を一通り学ぶ。

1年生で学ぶ線形代数や微分積分が理解できれば難なくクリアできるし、この講義を乗り越えられれば、この講義で使うレベルの数学を道具として使用する事は就職するまでないだろう。

というのも、応マテの大学院試験には数学がなく、専門科目(400点)と英語(100点)と面接(200点)で勝負が決まるのだ。

単位は空から降ってくるから数学嫌いな人でも安心してもらいたいし、数学が得意な人には非常に刺激的な授業だと思うので、数学が苦手だからという理由で工学部進学をためらっている方には”応マテに行くのも選択肢としてアリだ”ということをここに特記しておく。

 

結晶解析学:X線解析の基礎を学ぶ

応マテの各研究室にはXRDやXRFというX線を使って材料の成分分析をする装置がある。

結晶解析学とはそうした装置がどのような原理で計測を行っているのかを学ぶ講義である。

詳細な内容は受けてみてからのお楽しみ。

この講義を受け持つ先生は板書が非常に汚い個性的なので、ノートをとる際は先生の声を文字起こしした方が良いと私は考える。

幸いなことにオンライン授業になったので、画面をスクリーンショットして後で紙に書き出すことにすればノート執筆ではなく授業を聴くことに集中できる。今の学生は授業を受けるという面だけ見れば本当に恵まれている。

 

この講義の内容は本当に重要である。

結晶解析学の内容が分からなければX線装置を扱う事すらままならないし、それができなければ就職した時に材料系の技術者として非常に恥ずかしい思いをする事になるだろうからだ。

幸いなことに試験は中間・期末の二段構えで、テストの内容も簡単だし、例年過去問やテキスト通りの試験が行われているため、結晶解析学を受ける学生は落単の恐怖に苛まれずどっしり構えて勉強できる。

私は媚を売らずともAを獲得できた。やればやるだけこの科目では報われる。

 

材料デザイン工学:各研究室の教授によるありがた~いお話を聞く

応マテの研究室のボスたちによる持ち回りの授業。

各授業の最後に感想を書いて提出する、学生側には非常に楽な講義。

この講義を一通り聞き終わる頃には、自分の興味が材料科学分野のどこにあるのか今までよりずっと明確になってくるだろう。

3年後期の研究室配属の際には自分が気になる研究室を選ぶと思うので、各回の授業の印象はしっかり覚えておくとよい。

 

研究室配属の話をしたのでついでにこれも言っておくが、順風満帆な研究室生活を送るためには指導教員との相性がとても大切である。

教員と仲が悪くなってしまえば研究室に足を運べないぐらい精神が追い込まれてしまうかもしれないし、そもそも研究が進まないので卒業することすら困難になってしまうのである。

自分と相性の合う指導教員と巡り合うには、その教員が受け持つ授業を好きになれたかが割と重要。

材料デザイン工学は各研究室の教授の一面が垣間見られる貴重な機会なので、応マテに入った学生は先生に抱いた印象を忘れないようにしてもらいたい。

2年後期

プロセス物理化学・マテリアルプロセス工学:材料熱力学の続き。熱力学にpHが絡む。

2年後期には”プロセス”と言う名の授業が二つある。

プロセス物理化学マテリアルプロセス工学、この二つである。

どちらも基本的には2年前期の材料熱力学の続編であり、材料科学者に必須の熱力学的視点を得るためにこれらの講義は設けられている

とはいっても、両方の科目が同じことをやっているわけではなく、プロセス物理化学では割と電気化学反応的な題材(熱力学にpHが絡んでくる)を扱いマテリアルプロセス工学では自由度(P+f=C+2の”f”の項)について理解する事をメインに授業が進んでいく

 

(2年生で3つも熱力学の授業があるなんて多くないか?)とお思いの方がいらっしゃるかもしれない。

私自身も応マテに入った時にそう感じたが、これほど熱力学の授業が詰め込まれているのにはそれ相応の理由がある。

というのも、一つ学年が上がって3年生になると、こうした熱力学的視点を道具として自由自在に使いこなせなくては全く理解できない授業ばかりになるのである。

当たり前のようにギブスエネルギーという言葉が出てくるし、(え?それにギブスエネルギー関係あるの?)という所にまで熱力学は出没するのだ。

 

金属材料は全てエネルギーを持っているので熱力学の理解が必要なのも頷ける話。

現時点で熱力学が苦手だという人も応マテに入ったらみっちりゆっくり高校レベルからやり直すことができるので、少しでも金属に興味のある人は臆することなく移行先に選んで頂きたい。

 

環境工学概論・資源工学概論:環境問題や資源についてについてサラッとお勉強

前期で機械工学概論を履修し、後期には環境工学概論と資源工学概論を履修した。

総合理系1年生の時に環境工学コースや資源工学コースも移行先の選択肢として考えていたので非常に楽しく受講することができた。

特に、資源系の授業に私は大変興味をそそられた。

”私たち応マテの人間が何気なく実験で使用している銅板はこういう形で原料から精鉱されているんだ”と知った時は(材料をもうちょっと大切に使っていこう)と思ったし最も効率よく鉱山を爆破する方法を考えている教授の話を聞いた時は(この人に足元を爆破されないよう用心しよう)と改めて気を引き締めることになった

 

物質変換工学:応化の先生が週替わりで授業

前期では応マテの教授陣による持ち回りの講義があったが、後期には応用化学コースの教授陣によるありがた~いお話を聞く機会がある。

私はこの講義に全く興味をそそられなかったため授業中は空想に耽っていて、残念なことに皆さんへ授業内容をお伝えする事は出来ないのだが、授業中ずっと空想に耽っていても毎回の講義の最後に小さな紙へ感想を記すだけでA⁻がとれたことは覚えているのでその事を皆様に報告致します。

2011年にノーベル化学賞をとったのが北大の応化の先生であり、応化の先生方は(俺たちはノーベル賞をもらったコースの人間なんだぞ!すごいだろ!)とでも言わんばかりに威張り散らした自信に満ち溢れた講義をしていらっしゃったが、私自身は(ノーベル賞なんて欧米人が勝手に選んだだけで研究の価値に上下などないし、だいたいアンタがノーベル賞をもらったわけじゃないんだからアンタに威張られる筋合いはない)と思っていたので、面白いはずのものでも面白く思えなくなってしまった。

この記事を読む学生の皆さんには(私のようなひねくれた心を持たず健全に育ってほしい)と切に願っています。

 

表界面物理化学:電気化学についてザックリと

最後に紹介するのは、現在、私が研究室でお世話になっているM先生による講義である。

何を学ぶかというと、電気化学について学ぶのだ。

電気化学とは、電気とモノの変化が関わる現象を取り扱う学問である。

  • リチウムイオン電池や燃料電池
  • 腐食と防食
  • 表面メッキ処理

これらは全て電気化学の範疇となっている。

 

応マテは材料工学について学ぶコースだが、その中でもこの講義だけは特殊な位置付けである。

表界面物理化学

  • 高校で学んだ電気分解や電池反応はどうして発生するのか
  • 熱力学と電気化学反応をどうやって絡めていくか

という事を電極と電解液の界面で起こっている現象(電子とイオンの相互作用)から理解していく講義なのだ。

この講義は、(よしっ!ガッツリ金属について学んでやるぞ!)という人からすると(なんで化学をやらなアカンねん…)と面倒くさく思ってしまうかもしれない。

その一方、(何だか金属の勉強ばっかりでつまらないなぁ…)と思っている人には息抜きとなるためすごく面白いと思う。

 

授業は出席を一切とらないし、テストに出席さえすれば単位が流星群のように降ってくる。

授業合間にして下さる先生の雑談は思わず吹き出しちゃうほど面白いし、この講義が面白いと思ったらぜひ私が今いる研究室へ入って頂きたい。

私はこの先生の講義に魅了されて今の研究室を選んだが、その選択に微塵の後悔もしていない。

マニアックな人間にはマニアックな講義が面白いものであり、そういう人間には摩訶不思議なM先生のような教員がオススメである。

 

最後に

以上が北大応マテ第2学年で学ぶ科目の内容の概略である。

応マテに進学するか迷っている方の参考になれば非常に嬉しい。

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馬術競技からマラソンに転向した北大工学院のM1|国体馬術競技優勝&8回入賞|10000m36’33”|マラソン2°47’50”|100kmレース10°19’17”|英検準一級|TOEIC785点|ラン歴5年|乗馬歴10年|英語の学術論文2報(電気化学)|月間2万PVのブログ運営中|コメントやご相談はTwitterのDMまでお願いします。