これから、私が所属していた北大工学部の応用マテリアル工学コース(通称・応マテ)の学科紹介を始めていく。
- 総合理系に入学し、どこの学部へ行こうか迷っている人
- 応化(応用化学)と応マテの違いを知りたい人
- 早く北大に行きたくて仕方がない積極的な高校生
こうした人に興味を持っていただけるよう、この記事を作成した。
パンフレットや学科サイトを見ただけではホントの所など分からない。
そこで、元・北大生であるこの私が、応マテの内情を包み隠さずお伝えしていこうと思っている。
それではさっそく始めよう。
Contents
何を学んでいる学科なの?



まず、応マテは金属の性質について学んでいる学科である。
具体的には
- 金属の強度を上げる方法
- 鉱石から金属を作る方法(専門用語で製錬という)
- 金属の腐食を防ぎ、サビに強い材料を作る方法
こうした内容を学んでいる。
コース名に「マテリアル」と付いているので、材料全般を取り扱っているように思われがちだ。
しかし、実際は金属(特に鉄)をメインに勉強しており、そのついでに半導体やセラミックスについてもちょこっと触れるカリキュラムである。
(金属の事以外も学べるんじゃないか♪)と期待して応マテに入ると、金属ばかり勉強する事になって当惑するのは間違いなしだ。
そこの所は十分注意してコース選びをしてもらいたいし、金属が好きな人に応マテへ来てもらいたいと思っている。
どうしてこのような事を書くかというと、この記事を書いている私自身が(半導体みたいな材料の事についても学べるのだろうなぁ)と思って応マテに入ったからである。
あまり詳しく調べずに応マテに入った結果、時間割を組んでみて(えっ、金属の授業ばっかりやん笑)とびっくり仰天してしまった。
金属に興味のある人からすれば天国のようなカリキュラムだと思う一方、飛行機や車などの金属製品に興味を持てない人が入ってしまえば地獄のような学部生活となるだろう。
応マテでの勉強内容は”金属”についてであるから、この点に関しては本記事を読み終えてから移行先が決定するまでずっと覚えておいてもらいたい。
高校理科で言えばどの科目?



高校理科で言えば、物理と化学の2教科がベースとなっている。
生物や地学の要素を感じることは全くなく、物理や化学のどちらかだけで成り立っていると感じることもない。
物理の中でも特に原子物理が関連性の深い学科であり、化学においては無機化学や理論化学の原子構造・酸化還元・電気分解に縁のある学科である。
数学の授業も少しだけあるものの、材料の研究に数学力はあまり必要なく、金属と理科が好きであれば誰だってやっていけると私が太鼓判を押す。
応用物理や応用化学とどう違うの?



応マテが応用物理や応用化学と違う点は、応物は物理のみ/応化は化学を研究の基軸とするのに対し、応マテは物理と化学両方を武器に研究・開発していく点である。
応マテの最も良い所は、物理的なアプローチ(物質の存在の仕方から)と化学的なアプローチ(物質の性質から)のどちらをとってもOKな所である。
物理的な観点で行き詰ったら化学的なポイントから攻め、化学的な視点ではこれ以上は進めないとなったら物理という武器に切り替えて攻め続けられる。
応物と応化どちらにしようか迷っている人は応マテに来たら絶対楽しいと思うし、(物理と化学どっちかだと絶対飽きるだろう)と思っているエネルギッシュな学生さんにこそ応マテへ来て頂き、自らの余りある活動力を金属に吹き込んでもらいたい。
物理と化学両方を武器に戦っていくので、受ける講義も物理と化学が融合したような講義である。
頭の使い方に慣れないうちは理解が進まず戸惑うと思うが、”こんなもんだ”と受け入れてしまえば少しずつ授業が楽しくなってくる。
この世の中で2科目を武器にできる人材などそうそう多くはない。
応マテを卒業すれば自動的にレアな人材になれるので、他の人とは違う武器を手に入れたい!という人は是非とも応マテにお越し下さい。
資源循環や機械系との違いは?
資源循環や機械系と応マテが違う点は、製品製造工程のどこにいるかという点である。



製造工程の概略図を上に示す。
まず、資源循環の人間が鉱石を採ったり不純物だらけの原材料を高純度化したりして金属材料の元(もと)を作る。
次に、資源系の人が丹精込めて作った元(もと)を使い、応マテ(材料系)の人間が魔法の力で元を材料に変換していく。
最後に、機械系(もしくは建築系)の人間が用途に合った材料を選び、飛行機や建物やミサイルなど、街中でよく見かけるような”製品”に仕上げる。
資源系の人のおかげで金属を手に入れられ、材料系の人のおかげで今よりもっと機能の高い製品を作ることができ、機械系の人のおかげで製品を世にお披露目できる。
全ての分野はつながっており、どの分野が欠けても製品は出来上がらない。
元を製品にする橋渡し役、いわば縁の下の力持ちとして応マテは存在している。
皆さんには、”製品を作るどこの工程に行きたいか”という視点も持って学科選びをしてもらいたい。
最近はIT系が盛り上がっているけど、応マテって何だか地味じゃない?



まぁ、そうだよね。
IT革命を旗印に情報産業が勃興してきている今、モノよりコトの世界の方がきらびやかに見えるのは何の不思議もない。
ただ、世の中はソフト(情報や意識など、形のないもの)だけでは成り立たない事も覚えておいてもらいたい。
私たちの生活にはハード(建物や機械など、形のあるもの)が不可欠だし、より優れたハードがある事によってはじめてより優れた”ソフト”が成り立つのである。
ハード面の基盤となっているのが材料工学である。
材料工学は石器時代から人類の生活に寄り添って発達してきた学問であり、石器を作っていたのが今や宇宙や超高温下での使用にも耐えられる材料を作れるようになった。
そもそも、ネット社会の基盤となる電子素材を開発するのも材料工学の範疇である。
表でキャーキャー騒がれるのはIT系であり、ITと比べると応マテで学ぶ内容は地味なのに違いないが、材料工学なしでは技術革新は不可能なので、たとえ役回りは地味であろうと絶対に必要な学問なのである。
男女比は?



学年にもよるだろうが、私の学年は男子41人に女子1人と、機械系も顔負けの男子校状態だった。
私の一つ上の学年は女子が3人ぐらいいて、私の一つ下は(多分)4人いる感じであり、男子の方が圧倒的に多いのはどの学年も同じ模様である。
女子は生物系や農学部に行ってしまうので、応マテにはなかなか入ってくれないのである。
もしも学科内恋愛をしようと企んでいる野郎がいたら、応マテでは望みが叶わない事を先にお伝えしておく。
最後に
以上が応用マテリアル工学コースのコース紹介である。
皆さんが知りたかったことにしっかりとお答えできている事を願い、この記事の執筆を終えようと思う。
現在北大一年で学部移行に迷っていたので、とても参考になる記事でした。自分がどの工程に携わりたいのか考えようと思います!
TJオズマさん、コメントありがとうございます
しっかり迷って下さい。
色々な情報を集め、よくよく考え、最後は自分の心の声を信じて下さい。
周りの声に流されず、自分が決断した事に自信を持つように。
北大には様々な学部がありますから、貴方のやりたい事はなんだって叶います。
良い選択ができる事を祈っています。